アパート・マンション・賃貸経営の税金対策・節税の方法

賃貸経営を行う際には、税金のことまでしっかり計画を立てて利益を獲得したいものです。
ここでは、家賃収入にかかる税金に関して、具体的な税金対策の方法と注意点をまとめましたので、家賃収入の税金対策にぜひお役立てください。
賃貸経営で得られる家賃収入には、以下のような税金がかかります。

所得税

賃貸経営を始めるために、アパートやマンションなどの不動産物件を取得し、その物件から家賃収入を得ると所得税がかかります。

住民税

基本的に所得金額をもとに計算されます。

消費税

消費税は、売上高が1,000万円を超えた場合にその翌々年から課税されますが、居住用賃貸物件のみからの収入であれば1,000万円を超えても課税対象にはなりません。

ただし、居住用賃貸物件以外に、オフィス・駐車場・別荘などの賃貸物件がある場合、居住用賃貸物件を除いた売上高が1,000万円以上であれば課税されます。

また、居住用賃貸物件の一部をオフィスや店舗などとして貸付けする場合、面積比などを用いて按分することで算出します。

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家賃収入にかかる税金はどのように計算するのか

家賃収入にかかる税金を計算するには、まず以下の計算式で不動産所得を算出します。
・課税対象となる家賃収入(不動産所得)=家賃収入-必要経費

家賃収入には毎月の家賃だけではなく、以下も含まれます。
・礼金
・敷金や保証金のうち返還不要部分
・更新料
・共益費
・管理費
・駐車場

税金を算出する際には、滞納などで未収となっている家賃も、あるべき収入として計算しなければいけません。ただし、滞納家賃が入金された際の賃貸料計上は不要です。

家賃収入を得るために使用した費用が必要経費となり、必要経費には以下のようなものが含まれます。
・税金…固定資産税や都市計画税、不動産購入の際の不動産取得税、収入印紙代など
・保険料…火災保険料や地震保険料
・業務委託料…賃貸物件の管理を任せている会社への支払い
・税理士や司法書士への報酬…確定申告や登記手続きの際に依頼
・減価償却費
・修繕費
・ローン金利…建物を取得するために組んだローン金利、および、融資の手数料

以上の内容をもとに、所得税と住民税の計算方法は以下のようになります。

・所得税
不動産所得=家賃収入-経費
課税所得=不動産所得+他の所得-所得控除
所得税=課税所得×税率
課税される所得金額ごとの税率は、国税庁のホームページで確認できます。

・住民税
住民税は、基本的に所得金額の10%程度と考えておきましょう。

家賃収入の税金対策には4つの方法がある

せっかく得た家賃収入は、しっかりと税金対策を行い、少しでも税負担を減らしたいことでしょう。代表的な対策として以下の方法があります。

必要経費の計上

必要経費をもれなく計上します。賃貸経営では多くの支出が発生するため、適切に経費として計上することで、課税所得を減少させることができます。いくつか具体例を見てみましょう。

・減価償却費
減価償却費は、固定資産の価値の減少分を毎年少しずつ計上できる経費のことです。不動産経営で所有している物件も、減価償却が可能です。

減価償却費は“建物価格×償却率”の計算方法で算出できます。償却率は建物の構造や用途・法定耐用年数などによって異なります。減価償却の詳細な方法については以下でも紹介していますので、併せてご覧ください。

関連記事はこちら:「減価償却とは?メリットはあるの?わかりやすく解説!」

減価償却費は、通常個人であれば購入から耐用年数の終了まで毎年計上しますが、法人の場合は任意償却です。追加融資を受けたいなどの理由で黒字にしたい場合は、該当年の減価償却費の計上を見送ることもできます。減価償却費の計上によって赤字転落してしまう場合など、調整が必要な際は利用してみましょう。

・交際費
事業の関係者への接待で支出が発生した場合、交際費として経費にできます。管理会社の担当者や不動産コンサルタントとの飲食で発生した費用などが代表的です。

・交通費
賃貸経営を行う上で、交通費が発生した場合も経費にできます。経営している物件の見回りや、物件購入を検討する際の下見のための移動で発生した費用が対象です。ガソリン代や新幹線代、高速道路の利用料などを計上できます。

・通信費
不動産経営に利用している分のスマートフォンの利用料、書類のやりとりで発生した郵送料金などを通信費として計上できます。

・水道光熱費
事業に使用した分の電気代・水道代などを経費にできます。

青色申告を行う

事業所得・不動産所得・山林所得・譲渡所得を得ている場合、確定申告の区分の一つである青色申告を利用できます。青色申告を選ぶと、白色申告ではできないさまざまな節税対策が可能になります。

青色申告は、複式簿記という記帳方法を利用した所得の申告区分です。申告には“仕訳帳”“総勘定元帳”“損益計算書”“貸借対照表”など、各種書類や帳票が必要となるため、白色申告と比較すると難度が高く敬遠する方もいます。

ただ、申告方法が煩雑な分メリットは大きいといえます。例えば、青色事業専従者として家族に給与を支払った場合は、その給与を必要経費に計上することが可能です。

青色事業専従者給与の対象となるのは、同居しているか生計を一にしている配偶者や親・祖父母、15歳以上の子供などとなります。

さらに、青色申告では不動産所得が赤字になった場合には、損失申告を行うことで最長3年間にわたって赤字分を繰り越すことができ、黒字になった年の課税所得から繰り越した赤字分を差し引く繰越控除を受けることが可能です。

青色申告最大のメリットが、最高65万円までの特別控除です。控除額が大きいため、節税に大いに役立ちます。

ただ、最高65万円の特別控除を利用するには、複数の要件があります。賃貸経営を行っている事業者であれば、特に以下の3つの項目に注意が必要です。

・事業規模として申告可能な“5棟10室”をクリアしていること
不動産所得は、経営している賃貸物件の数が事業規模と認められなければ、最高65万円の特別控除の対象とはなりません。一般的には“アパートなら10室以上が賃貸用であること”“独立した建物で5棟以上を貸付け”のどちらかの基準を満たしていれば、事業規模と認められることが多いです。

・正規の簿記の原則で会計記帳を行うこと
複式簿記のルールに基づいて記帳を行うことが必要です。申告の際は損益計算書と貸借対照表の2種類の財務諸表を提出すること、日々の取引を総勘定帳に記録し保管しておくなどの制約があります。

・e-Taxで申告を行うこと
e-Taxとは、インターネットを利用して自宅にいながら所得の申告を行える仕組みのことです。令和2年分の確定申告から最高65万円控除の要件としてe-Taxによる申告が加わりました。
e-Taxを利用せず、従来どおりの紙ベースでの確定申告を行うと特別控除額が最高55万までになってしまうので、これまで青色申告を行っていた人も注意が必要です。

e-Taxの利用には、マイナンバーカードの取得や利用者識別番号の取得、場合によってはICカードリーダーなど、事前に各種手続きや準備物が必要です。特にマイナンバーカードは取得に2ヵ月以上かかる場合もあるため、早めの準備をおすすめします。

小規模企業共済に加入

小規模企業共済は、個人事業主や法人の役員などが、将来に備えて退職金・年金を積み立てておける制度です。掛け金が全額所得控除の対象となり、退職時・廃業時に受け取る共済金も税制上の優遇を受けられます。不動産の所得を圧縮しつつ、将来に備えて積み立てを行うことが可能です。

・小規模企業共済の掛け金
月額1,000円から7万円まで、500円単位で任意に設定でき、契約後の変更も可能です。

・共済金の受け取り方法
共済金は契約内容に応じ、以下のようなタイミングで受け取ることができます。

・事業の廃業または譲渡
・65歳以上で180カ月以上掛け金を支払った方
・退任または退職
・共済の途中解約
・共済契約者の死亡

共済金は一括・または分割で受け取れます。一時金として一括で受け取れば退職所得に、分割で受け取れば公的年金控除の対象となり、税制の優遇を受けることが可能です。

なお、契約から240ヵ月(20年)未満で解約した場合は掛け金に対して元本割れを起こすことがあるため注意が必要です。

・加入方法
小規模企業共済の加入には、法人と個人事業主で以下のように要件が設定されています。

法人

事業主が賃貸経営事業を法人化しており、法人の役員になっていれば加入資格が得られる。不動産は法人名義で所有している必要がある。

個人事業主

サラリーマンが副業として賃貸経営を行っている場合は原則対象外。給与所得を大きく上回る収益があり、不動産経営が主たる事業であれば契約できる場合がある。

サラリーマンが副業にしている場合は加入が限定されるため注意が必要です。小規模企業共済への加入を検討する場合は、運営元である中小企業基盤整備機構に契約の可否を一度問い合わせてみることをおすすめします。

規模次第では法人化も

事業の規模が大きくなり、所得が増加してくると、法人化したほうが節税になることがあります。法人化のメリットとして、以下の3つが代表的です。

・実効税率の差で節税できる場合がある
・所得分散効果を期待できる
・法人のほうが経費の融通が利く

それぞれの詳細を解説していきます。

1.法人と個人の実効税率の格差で節税できる場合がある
実効税率とは、法人の実質的な所得税の負担率のことで、主に法人税率・住民税税率・事業税率などの合計が利益に占める割合で算出されます。
法人の場合は事業税の損金算入や課税標準額の基準が異なることから、法人の実質的な税率は、個人の各税率の合計より低くなる場合もあります。

同じ所得でも個人事業主と法人では実効税率に差があるため、所得が増加すると法人化しておいたほうが全体的な税金が安くなることがあるのです。

現在、日本では法人税率は年々引き下げられている一方、個人の所得税は増加傾向にあります。個人では最高45%の所得税率が適用される場合もあります。事業の所得が増加しているのに個人のままでいると税率が増加するため、法人化することで節税が可能な場合があります。

2.所得分散効果を期待できる
法人では役員報酬を経費にできるため、家族を役員にして分散して報酬を支払うことで、所得税の合計額を抑えることができます。所得税の税率は課税所得が多ければ多いほど高くなるからです。

仮に、一人で1,000万円の所得を得ているケースと、事業主が700万円、妻に給与として300万円支払っているケースでは、合計金額は同じでも後者のほうが支払う税金は安くなります。

なお、役員報酬を計上する際は、報酬の金額が実態に沿っているかに注意してください。高額すぎる報酬は税務調査の対象となる場合があります。

3.規模次第では法人化も
賃貸経営の経費において、法人の強みの一つが、譲渡所得と不動産所得を損益通算できることです。

個人で不動産経営をしている場合、賃料収入(不動産所得)と不動産の譲渡益(譲渡所得)は、それぞれ異なる独立した所得として扱われます。そのため、譲渡損失が出た場合でも、損益通算できません。

一方、法人の場合は全体で一つの事業と見なされるため、経費の利用や売却損によって出た赤字を相殺でき、全体の課税所得を減らすことができます。

ただし、法人の設立・運営には相応の費用がかかりますので、ある程度の経営規模であることが必要です。 法人の設立と運営にかかる具体的な費用と金額は以下のとおりです。

法人設立のために必要な費用(株式会社の場合)

費用項目

金額

公証人手数料

5万1,000円(増減あり)

定款印紙代

4万円

登記簿謄本代

2冊2,000円

登録免許税(印紙代)

最低税額15万円~

行政書士・司法書士への報酬

事務所によって異なる

5万円~10万円程度が相場

法人運営のために必要な費用(株式会社の場合)

費用項目

金額

法人住民税の均等割分

資本金1,000万円以下:約7万円

資本金1,000万円超:約18万円

※赤字・黒字に関係なく発生

取締役の改選登記費用

1万円

※最長で10年に1度発生

税理士に支払う顧問料

月額2万円から5万円程度

※依頼する事務所・法人の事業規模によって異なる

法人の設立と維持には、最低でも上記の金額は発生します。法人化は、設立費用を払っても収益に大きな影響がないか、定期的に出ていく維持費を問題なく支払えるかも加味して決定しましょう。

法人の設立にかかる費用を節約したいのであれば、専門家に依頼せず自分で行うことも可能ですが、提出書類に不備があると再申請が必要になることがあります。そのため、基本的には司法書士などの専門家に依頼するのが確実です。

なお、サラリーマンが法人化する場合は、勤め先の社内規則で副業が禁止されていないかを確認する必要があります。また、株式会社の場合は確定申告の時期が決算日によって変わってくるため、個人の場合とは時期が違います。こちらも併せて確認しておきましょう。

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税金対策に関する注意点

前述の税金対策に関して、注意すべき点を確認しておきましょう。

過度の経費計上

経費を使うことが節税になるからといって使いすぎてしまうと、キャッシュフローのバランスが取れなくなってしまうことや、過度の計上で税務署のチェック対象になってしまうこともあるでしょう。

また、将来的に新たな融資の希望がある場合、所得状況が金融機関の審査に影響することも忘れてはいけません。

青色申告の届出

青色申告をする場合は、青色申告書をする年の3月15日までに青色申告承認申請書の届出が必要です。ただし、その年の1月16日以後に新たな事業の開始や不動産の貸付けをした場合には、その事業開始などの日から2カ月以内の届出となります。

法人化で得られる効果が大きいか

法人化には、給与の計上や経費の拡大など多くの節税効果があります。しかし、設立・運営費用がかかる上に、給与を支払うには社会保険への加入が必要であることや、個人事業主より税務調査の対象になりやすいという側面もあるでしょう。

法人化すれば良いというものではなく、必要な費用と得られる効果の両面から判断することが大切です。

家賃収入の税金対策は青色申告・法人化も視野に

家賃収入でしっかりと利益を獲得するためには、家賃収入にかかる税金の内容と計算方法を把握した上で税金対策を行いましょう。

一般的に、不動産投資の事業的規模10室程度であれば青色申告基準となり、青色申告特別控除の対象となります。白色申告から青色申告へ切り替える際は、前年度に申請手続きが必要なので、早めに準備をしておくことが必要です。

法人化にも経費計上の幅が広がるなどのメリットがありますが、その反面、費用負担が増すことも忘れてはいけません。

税金の仕組みや対応方法などは複雑です。その上、税金対策は単に節税だけではなく、融資を受ける際の審査まで考慮に入れて行う必要があり、高いレベルの専門知識が求められます。

また、確定申告を行う際に必要となる帳簿や書類作成などは、個人の知識では難しいため、不安がある場合は税理士に相談したほうがよいでしょう。