空き家対策事例をご紹介! 自治体による取り組みや空き家事情を徹底解説

空き家となった建物を、この先どうすれば良いか悩んでいる方は少なくないでしょう。住居として利用する予定がない場合には解体するという方法もありますが、解体すると税金が高くなる場合もあります。また、将来的に相続する予定、または現在所有している住宅や賃貸住宅について、所有したまま活用する方法がないか検討している方もいるでしょう。空き家を放置すると倒壊が起きたり犯罪に巻き込まれたりする恐れもあり、何らかの対策を考えておく必要があります。

この記事では、日本における空き家の現状について、その数の年単位での推移や地域別の状況に注目して解説し、空き家の何が問題視されるのか、その要因もお伝えします。また、空き家の活用法を具体的に紹介するとともに、各自治体が取り組む空き家対策の事例なども紹介します。

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社会問題化している空き家事情

日本は高齢者の割合が多い国であるといわれています。そのため要介護のため施設で暮らす方や健康不安などからサービス付き高齢者賃貸などで暮らす方がいるなど高齢化社会の影響もあり、現在空き家は増加し社会問題となっています。ここからは、空き家の現状と地域別での空き家発生状況などを国の調査をもとに紹介します。また、なぜ空き家が社会問題となっているのかその要因についても詳しく解説していきます。

空き家は年々増加傾向にある

総務省の2018(平成30年)年住宅・土地統計調査によると、全国の総住宅数は6,240万7,000戸であり、そのうち居住世帯のある住宅は5,361万6,000戸、総住宅数の85.9%を占めています。そのうち848万9,000戸が「空き家」となっており、総住宅数の実に13.6%を占めています。2013年の統計調査では、空き家の数は819万6,000戸だったので、5年間で29万3,000戸ほど増えている結果となっています。

空き家の内訳としては、「賃貸用の住宅」が432万7,000戸で総住宅数の6.9%を占めています。次いで別荘などの「二次的住宅」が38万1,000戸で同0.6%、「売却用の住宅」が29万3,000戸で同0.5%。「その他の住宅」は348万7,000戸で5.6%となっています。これらの空き家の内訳を2013年の統計調査と比較すると、「賃貸用の住宅」が3万5,000戸増加、「売却用の住宅」は1万5,000戸減少、「二次的住宅」は3万1,000戸減少となっています。特に「賃貸用の住宅」の空き家が増加していることがわかります。

住宅が空き家となる要因として考えられるのが、日本の高齢化社会です。高齢者の中には、子世帯との同居により自宅に住まなくなったり、老人ホームなどの施設に転居したりする方もいます。高齢化が進む現状では、自宅を離れる方も増え、空き家の増加は避けられないでしょう。

社会問題となっているのは、単に空き家が増えているということだけではありません。空き家になっている住宅を適切に維持管理することができない状況も問題視されているのです。親が施設に入所して、それまでの住宅が空き家となり、そのまま放置されるケースは少なくありません。また、相続となった住宅の空き家状態が続き、災害に対応できるような維持管理の費用も負担できないのが現状です。建物としての危険性が高まるだけでなく、景観を損ねるなどの問題も抱えています。

空き家の数は首都圏が多い傾向

次に総務省の2018(平成30年)年住宅・土地統計調査をもとに、都道府県別の空き家割合をみていきます。総住宅数に対する空き家率の全国平均は13.6%です。首都圏の空き家率は、東京10.6%、千葉県12.6%、神奈川県10.8%、埼玉県10.2%と、似たような割合です。一方、関西圏の空き家率は、大阪15.2%、兵庫県13.4%、京都府12.8%、奈良県14.1%と。いずれも首都圏よりも高い傾向にあります。

割合だけを比較すれば、関西圏のほうが空き家率は高いですが、分母となる総住宅数に注目すると見え方が変わります。例えば東京都の総住宅数は767万2,000戸で、空き家率が10.6%ですから空き家の実数は約81万3,000戸。一方で大阪府の総住宅数は468万戸、空き家率が15.2%ですからその数は約71万1,000戸となり、空き家の実数では東京都のほうが多いことがわかります。首都圏と比べ、関西圏の総住宅数は少ない傾向にあるため、実数では首都圏のほうが空き家が多く存在していることがポイントです。

老朽化した空き家の耐久性の問題点

空き家が社会問題となっている理由のひとつとして、建物の老朽化によって倒壊など近隣への危険性が高まることが挙げられます。

国土交通省の平成26年(2014年)空き家実態調査によると、現状が空き家となっている建物のうち67.3%が昭和55年(1980年)以前に建てられたもので、築40年を超えているという結果となっています。内訳は、昭和25年以前が15.4%、昭和26~35年までが8.8%、昭和36~45年までが17.9%、昭和46~55年までが25.2%となっています。特に、1980年以前に建てられた建物は、団地タイプなどの集合住宅が多いです。その背景として、1970~80年代の人口増加が考えられます。

木造の建物の場合、適切なメンテナンスをしていても築30年を超えると雨漏りなど大きな不具合が増える傾向にあります。維持管理が行き届かず、古い建物が空き家になれば、建物倒壊の危険度も増していくといえるでしょう。築年数が経過し、適切な維持管理がなされていない空き家を再利用するには、費用負担の大きい修繕が必要となり、そのままでの活用は難しいのが現状です。国土交通省によると、活用が可能な空き家は約15%にとどまると試算されています。

空き家と税金の関係について

空き家の増加には、税金の仕組みも影響しています。土地・建物のような不動産には固定資産税が課税されますが、それは空き家であっても例外ではありません。それならば「空き家を解体してなくせば良いのでは」と考えるかもしれません。しかし、一定の要件に該当する不動産には固定資産税の軽減措置が適用されているため、解体してしまうとそれが適用されず、かえって税金が高くなってしまうのです。ここでは、空き家と税金にはどのような関係があるのか詳しく解説していきます。

固定資産税とは

固定資産税とは、毎年1月1日を基準日としてその時点で所有する土地・建物など不動産に課税されるものです。納税者は、固定資産課税台帳に登録されている人で、納税通知書は基本的に登録住所に届きます。また、固定資産税は、不動産を所有し続けている限り毎年課税されます。土地と建物が別々に区分されているので、空き家であっても課税対象となります。

税額は該当する不動産に対する課税評価額をもとに算出され、計算式は次のとおりです。

固定資産税=課税基準×1.4%

また、都市計画区域においては、都市計画税も合わせて課税され、税額は次のとおり求めます。なお、都市部においてはほとんどが都市計画区域に指定されています。

都市計画税=課税基準×0.3%(最大)

以下で詳しく解説しますが、固定資産税・都市計画税には、一定の要件を満たす住宅に「固定資産税の住宅用地の特例」という軽減税率が適用されます。放置される空き家が増加する要因には、この住宅用地の特例が関係していると考えられます。

空き家の固定資産税

空き家を所有し続ける限り、固定資産税は課税されます。ただし、「住宅用地の特例」という制度があり、次のように要件に該当する土地に対し、固定資産税・都市計画税の税率を軽減することができます。マイホームや別荘(セカンドハウス)、住宅賃貸用アパート・マンションなどが対象です。

・小規模住宅用地(住宅やアパート等の敷地で200平方メートル以下の部分)
固定資産税=課税基準×1/6
都市計画税=課税基準×1/3
なお、建物の課税床面積の10倍が上限とされています。

・一般住宅用地(住宅やアパート等の敷地で200平方メートル超の部分)
固定資産税=課税基準×1/3
都市計画税=課税基準×2/3

住宅用地の特例は、敷地の上に建物が存在することによって適用されるものです。この場合、空き家を解体して更地にすることで、特例対象外となります。つまり、土地の固定資産税の軽減が受けられず、解体前より高くなってしまう仕組みになっているのです。解体費用を負担したうえに、解体後は次年度の土地の固定資産税が上がることになるため、空き家をそのままにしている方が多いのではないかと考えられます。

特定空き家に指定された場合の注意点

住宅用地の特例により、空き家が老朽化しても放置する事例が多くなっているため、問題のある空き家を「特定空き家」として指定する制度があります。特定空き家に指定された場合、一般の空き家とはどのように扱いが変わるのでしょうか。

・特定空き家の定義

特定空き家とは、2015年5月に完全施行された「空き家対策特別措置法」で定められたものです。継続的に放置すれば倒壊の危険が高く、保安上危険となる可能性があったり、著しく衛生上有害となる可能性があったりする状態、また適切な管理が行われていないために景観を損ねている状態に置かれている空き家を対象としています。

特定空き家に指定されるのは、自治体が空き家の調査を行い要件に該当すると認められた場合です。

・特定空き家の要件

倒壊等著しく保安上危険となる恐れがある状態
著しく衛生上有害となる恐れがある状態
適切な管理が行われず著しく景観を損なっている状態
その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態

・特定空き家に指定された場合

特定空き家に指定され、自治体から勧告を受けると、「住宅用地の特例」の対象外とされてしまいます。それでもなお自治体からの不適切な箇所の改善の命令に違反すると、最大50万円以下の罰金が科せられます。特定空き家の指定から命令違反等までは次のような流れになります。

空き家の調査→特定空き家に指定→助言・指導→勧告(住宅用地の特例の対象除外)→命令(命令違反は最大50万円以下の罰金)→行政代執行

前述のように、自治体から勧告を受け住宅用地の特例の対象外となると、空き家が存在していても更地の状態と同様の固定資産税が課税されます。特例の対象であるときと比べて6倍の課税額となりますので、空き家の所有者は注意しなければなりません。

なお、最終的に現状を改善できない場合は、行政代執行が行われ強制的に解体されることになります。もちろん解体費用は所有者の負担になりますので、ここまでの過程において多くの負担が発生することになります。

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具体的な空き家対策事例をご紹介

上記のとおり、空き家を所有している場合それを放置して、特定空き家に指定されることは避けなければなりません。そのためには、空き家を活用することもひとつの方法です。ここからは、賃貸住宅の空き家を所有する場合の活用方法について紹介していきます。

賃貸住宅の空き家対策の事例

賃貸住宅が空き家となる要因には、建物の老朽化が進むことで入居希望者が減り、空室率が高まることが考えられます。近隣に同じような顧客層をターゲットとした新築物件が建つと、入居者が奪われてしまうこともあるでしょう。入居者に検討物件として選んでもらうため、単に家賃を下げるだけの対応をしても、建物の老朽化が進めば修繕箇所が増えるなど管理費用の負担につながります。また、空室が増えると、既存の入居者も転居を考え始めるなど連鎖する可能性が高まり、結果的に空き家となることも考えられます。このようなことになる前に、空き家となってしまったとき、どのような活用方法があるか具体的な事例を紹介します。

・リフォームして賃貸

空き家となっている賃貸住宅をリフォームして、賃貸を継続する方法です。入居者が減ってしまった要因には、外観の劣化や間取りや内装がニーズに合っていないことなどがあるかもしれません。

外回りでは外壁・屋根の張り替え、内部は和室をフローリングに変えたり、キッチンの配置などを変えたりすることで、現代の暮らしのスタイルに合わせた居住空間にできます。設備の入れ替えなどの部分的なリフォームで対応できるものであれば、費用負担が少なく取り組みやすいでしょう。
家賃を下げるなどして対応することもできますが、リフォームの工事内容によっては、リフォーム費用をその後の家賃収入で回収できなくなるケースもあります。どの程度のリフォームが必要かは賃貸住宅の現況にもよりますが、大規模リフォームが必要となる場合、費用負担は大きくなりますので、物件の立地条件などをよく考え、収益をシミュレーションして比較しながら検討しましょう。

・建て替えて賃貸

賃貸住宅の築年数が経過していて、活用するには費用負担の大きい大規模リフォームが必要となる場合、建て替えという選択肢もあります。建て替えによって、ターゲットとなる顧客層に合う賃貸物件に対応できること、家賃の引き上げを検討できることなどのメリットがあります。

建て替えは費用が大きくなりますので、きちんとした収益を見込むためには、そこが賃貸住宅の需要がある地域であることがポイントになります。建て替えかリフォームかは、収支計画を立ててよく検討することが大切です。建て替えと決めた場合、家賃をどれくらい引き上げるか、賃貸数をどのように増やすかなど、早めにその費用を回収する方法を専門家に相談することをおすすめします。

・更地にして駐車場・貸し土地

初期費用を抑えて活用したい場合は、更地にして駐車場や貸し土地として収入を得る方法もあります。また、賃貸住宅として活用しても収益が見込めない地域などでは更地として、活用方法を検討してみましょう。

駐車場の場合、コインパーキングと月極駐車場の2つの活用方法があります。立地条件などによってどちらが向いているのか検討しましょう。また、貸し土地としては、コンテナを利用したレンタル倉庫や、場所によっては資材置き場や重機車両の駐車場なども検討できます。

・現状のまま賃貸

もし建物が老朽化していないなら、空き家となっている賃貸住宅をそのまま賃貸する方法もあります。相続などで賃貸住宅の所有者となったけれど、自分では大家としての対応ができないため、活用できずにいる方も少なくないでしょう。このような方は、建物の維持管理を管理会社に委託して、家賃収入だけを受け取ることも可能です。管理会社に任せた場合、募集から入居、退去後の対応まですべてを委託することができます。建物の維持管理を定期的に行えば、賃貸住宅の寿命を延ばすことが期待でき、さらには安定した収入にもつながります。

地方自治体による空き家対策事例をご紹介

空き家ごとに現状や立地条件が違うため、どのように活用すれば良いか所有者だけで解決できないことも多いことから、自治体は活用方法の提案に積極的に取り組んでいます。ここからは、各自治体が独自に取り組む空き家の活用法や補助・助成金など施策の事例を紹介していきます。

空き家対策として自治体が積極的に対応

年々増加傾向にある空き家に対して、自治体は活用法の提案や、特定空き家の指定を回避するために解体費用の補助などさまざまな対策を行っています。

・東京都の事例

東京都は、総住宅数の空き家の割合は全国平均よりも低いですが、総数が多いため空き家の実数としては最も多くなっているのが現状です。都では「空き家情報サイト」を開設し、空き家の適正管理や有効活用などについて情報を発信しています。

空き家を活用するための区市町村事業としては、次のような補助・助成金などの制度が設けられています。

・文京区 空家等利活用事業

用途が営利を目的としない集会・交流施設、体験・学習施設、その他地域の活性化に資す施設であり、賃貸借契約に基づき事業を10年以上継続するなど要件を満たした場合、空き家等利活用のために必要な改修費用を補助。上限200万円

・台東区 空き家活用モデル事業

子育てに配慮した住宅への改修工事を含む工事一式の費用の1/2を補助(上限50万円)。併せて行うバリアフリー改修工事、省エネルギー改修工事も対象

・墨田区 老朽危険家屋の除却費等助成制度

管理不全のため危険な状態になっている建築物を解体後に、その跡地を原則10年間、区へ無償貸与することを条件に、所有者に解体費用を助成。上限200万円

・荒川区 老朽空家住宅除却助成事業

危険な老朽空き家住宅を解体するための費用の1/2を助成(上限50万円)。対象となるのは、1年以上使用されていないことが確認できること、住宅部分の面積が1/2以上あること、昭和56年5月31日以前に建築されていること、区の現場調査等により倒壊等の恐れがあると診断されたことなどの要件を満たした建築物。

東京都以外の地域でも独自の支援制度が設けられたり、空き家を所有する人と賃貸として利用したい人のマッチングを行ったりしている区町村があります。

・岡山市の事例

岡山市では、空家等適正管理支援事業(リフォーム)として、空き家の再生改修に必要な費用の一部を補助する制度があります。対象者は、空き家の所有者等で、市税を滞納していないこと、反社会的勢力ではないなどです。一定の要件に該当するリフォーム費用の1/3が補助されます。ただし上限は50万円になっています。

この他、空き家バンクへの登録で、空き家と空き家を利したい人とのマッチングを支援する取り組みも進められています。

・金沢市の事例

金沢市では、空き家の現状と危険な空き家の防止策、空き家の活用方法などを、市民にわかりやすく周知するため、専用のリーフレットを使って空き家対策に取り組んでいます。専用リーフレットでは、空き家が問題視されている要因を図解などで解説されているほか、危険性が高い空き家が万一、第三者に損害を与えた場合のリスクも説明されています。また、危険な空き家としないための予防対策を紹介している点もポイントです。高齢者にも理解しやすく、活用方法の検討をサポートしています。

・弘前市の事例

弘前市では、空き家・空き地利活用事業として、空き家・空き地の購入、賃借、空き家の解体などに対して、補助金制度があります。補助対象者は、空き地を購入し、その土地に住宅を新築する方、空き家(敷地含む)を購入する方、移住者で、空き家を賃借する方、所有する空き家を解体する方、所有する空き家にある動産(家財)を処分する方などです。移住者は、補助金申請の時点で1年以上弘前市以外に住民登録をしていて、弘前市に移住しようとする方を指します。

補助金の対象となる費用は、空き地・空き家の購入や空き家の3年分の賃借料、空き家の解体費用などです。補助金額は例えば、空き家の解体では、費用の1/2、上限は50万円までとなっています。空き家購入者にも補助されることで、空き家の活用を活性化させる目的もあります。

豊富な実績から、空き家活用方法に最適なアドバイスを

高齢化社会が進み、今後ますます空き家が増えていくことは避けられないと考えられます。親世帯と子世帯が別々の住宅を所有していて親世帯の空き家を管理しなければならなくなったり、相続によって賃貸住宅を所有したりする事例が多くなるでしょう。空き家となった際の活用方法について、自分だけで的確な選択をすることは難しい場合があります。

賃貸を継続する場合、リフォームしたほうが良いか、建て替えするべきなのかの判断は建物の状況を正確に見極めることが大切になります。また、費用負担ができるだけ少ない活用方法を検討したい場合、駐車場にするなどの選択肢もあります。生和コーポレーションは、これらの空き家を含む土地活用法について、豊富な実績を持っています。賃貸する場合の収益計画についてもしっかりとシミュレーションし、最適なアドバイスをします。

また、賃貸で不安な手続きや建物の維持管理においてもサポートします。現状の確認から建築計画まですべてお任せいただけます。空き家の活用方法を検討されている方は、生和コーポレーションにお気軽にご相談ください。