家賃収入には消費税がかかるのか?賃貸物件の課税と非課税の違いとは

2019年10月には、消費税の課税率改定が控えています。
不動産の家賃収入がある場合には、自分が消費税の申告と納税が必要になる「課税業者」になるのかどうかが分からず、不安に感じている人もいるのではないでしょうか。

「課税業者」になる判断基準は、一般的に「課税売上額」が1,000万円を越えることです。
この「課税売上額」とは消費税が課される取引の売上額を指し、家賃収入では「事業用家賃」が課税売上となります。なお、住宅用家賃は基本的に非課税売上ですが、「賃貸期間が1カ月未満の住宅用家賃」のみ課税売上となります。
つまり、家賃収入で「課税業者」になるのは、「事業用家賃、または賃貸期間1カ月未満の住宅用家賃が1,000万円を超えたとき」、もしくは「それら家賃の合計額が1,000万円を超えたとき」です。

課税業者、課税売上について簡単に説明しましたが、どのような家賃収入が課税対象、非課税対象となるのか、また、課税業者となったときには消費税をいつ支払うのか、といった点についてさらに詳しく見ていきましょう。

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住宅の家賃収入は非課税売上 

賃貸物件を住宅用として運用する場合は、非課税となります。例えば、月々の家賃収入が90万円で年間1,080万円の家賃収入があっても、課税業者にはなりません。
ただし、「住宅用の家賃収入」となるには、以下ふたつの要件をすべて満たす必要があります。

・契約書に明示されていること
住宅用であるかどうかは、契約で住宅用と明らかにされているかで判断されます。
契約書に明示されていれば、賃貸契約が非課税取引であるため、家賃収入は非課税となりますが、契約書に明示がないと住宅用と判断されず、課税取引となってしまう可能性があります。

・賃貸期間が1カ月以上
賃貸期間が1カ月未満の場合は、住宅用として運用している賃貸物件であっても、住宅用と判断されず課税対象となります。ただし、課税売上が1,000万円以下 の場合は非課税となります。

上記すべての要件に該当しないと課税対象と判断されるケースがありますので、十分な注意が必要です。

事務所・店舗の家賃収入は課税売上

事業用の家賃収入は課税取引となるわけですが、具体的にはどのような賃貸契約を指しているのか、確認していきましょう。

事業用の家賃収入とは

事業用の家賃収入とは、事務所や店舗、貸倉庫などの事業用物件から得た家賃収入のことであり、住宅用と違って課税対象になります。

総額が対象

事業用賃貸物件で土地付きで建物を一緒に貸し出す場合、土地と建物両方の家賃に課税されます。本来、土地は非課税で取引されるものですが、土地と建物を同じオーナー様が貸し出すときは課税取引となります。また、契約書で土地と建物を区分して表記したとしても、土地部分を非課税にすることはできません。

ただし、オーナー様が土地のみを第三者に貸し出し、その土地を借りた人が店舗などを建てた場合は土地部分の家賃は非課税となります。

事業用家賃収入が1、000万円超で課税業者 

事務所や店舗の家賃収入が1,000万円超だと、消費税の課税業者になります。
課税対象となる家賃収入が1,000万円超の場合のみ、消費税の納付義務が発生するものですので、事業用の家賃収入が1,000万円以下であれば課税業者にはならず、消費税を納める必要はありません。課税取引の対象となりそうな事務所や店舗などをお持ちのオーナー様は、しっかりと確認しておきましょう。

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集合住宅の共益費や管理費は課税?非課税? 

アパートやマンションなどの集合住宅の場合、家賃とは別に管理費や共益費が発生することが多いでしょう。ここからは、管理費・共益費・駐車場などの消費税は課税か非課税か、どのように判断されるものなのか解説します。

集合住宅の共益費、管理費などは非課税

アパートやマンションの共益費・管理費などは、住宅として入居者が共同で利用する部分の費用負担であるなら非課税になります。

駐車場代は要件次第で非課税になる

アパート・マンションの駐車場代は、次の要件をすべて満たす場合に限り非課税になります。

・入居者1戸あたり1台分以上の駐車スペースが確保されている
・入居者の自動車保有の有無にかかわらず全戸分に駐車場が割り当てられている
・入居者から部屋の賃料と駐車場代を別々で受け取っていない

入居者の希望によって付帯された設備の利用料は課税

入居者の希望により、家具・家電や倉庫などをレンタルしている場合、その利用料は課税対象です。また、マンションに併設されているプールやトレーニングジム、温泉などの付帯施設は、入居者以外の一般客も利用できる場合、利用料は課税対象となります。

アパート・マンションに付帯された設備に関して、消費税が課税させるか否かは、国税庁ホームページの「集合住宅の家賃、共益費、管理料等の課税・非課税の判定」で詳しく区分されていますので、確認してみましょう。

 家賃収入1,000万円超えでも消費税課税業者にならない? 
住宅用の家賃収入は非課税となりますので、家賃収入が1,000万円を越えても消費税課税業者にはなりません。しかし、住宅用・事業用の両方で家賃収入がある場合、事業用の家賃収入部分が1,000万円を越えると課税業者になりますので、管理している物件の家賃収入の内訳をしっかりと把握しておくことが重要です。

ただし、家賃収入の他に、別の事業などによる複数の収入がある場合は、事業用家賃と別の課税売上の事業が合算されることがありますので注意しましょう。

課税業者になったら消費税はすぐ支払うのか 

課税業者になった場合でも、消費税を支払うのは2年後になり、納める消費税は課税業者となった年の売上ではなく、2年後の売上をもとに算出されます。

課税業者となった年の売上額が5,000万円以下であれば、消費税の計算を簡易的にできる簡易課税制度を利用することが可能です。ただし、簡易課税制度を利用するためには、課税業者となったときに税務署に対して届出をしなければなりません。

簡易課税制度では、業種によって決められている「みなし仕入れ率」をもとに納税すべき消費税を計算します。不動産業は第6種事業に位置付けられており、みなし仕入れ率は40%になります。また、納付税額の計算式は下記の通りです。

納付税額=(課税売上高×消費税率)−(課税売上高×みなし仕入率×消費税率)

基本的には住宅用の家賃収入が非課税になりますが、駐車場代や付帯設備など一部では課税対象となる取引があります。申告漏れなどになると、後から税務調査になる可能性もありますので、自分が課税業者になりそうな場合は安易に個人で判断せず、税理士などのプロにきちんと相談したほうがよいでしょう。

家賃収入に対して消費税が課税・非課税となるかは専門家に相談を

今回は、賃貸経営で得られる家賃収入は、消費税がかかる取引と判断されるかどうかなどについて、課税業者になる要件を含めてお伝えしました。住宅用物件、事業用物件で消費税の取り扱いが変わるため、自分が管理する物件が何に該当するか、事前に確認しておきましょう。

また、住宅用と事業用の両方で家賃収入がある場合は、取り扱い額の内訳もしっかりと確認しておくことが重要です。税区分を判断することに不安がある場合は、税理士などの専門家に相談して早期に解決できるようにしましょう。

※写真はイメージです
※本記事は、2019年4月以前時点の情報をもとに執筆しています。 マーケットの変化や、法律・制度の変更により状況が異なる場合があります
※記事中では一般的な事例や試算を取り上げています。個別の案件については、お気軽にお問い合わせください。