家賃収入の税金はどのくらいかかるの?不動産所得の税額

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家賃収入はどのような所得になるの?

所得税法は、所得の種類を収入の種類によって次の10種類と定めています。

利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得

例えば、株式の配当を受け取ったら「配当所得」、お店で商品を売って利益を得たら「事業所得」というように、所得は“どのようにして得た収入か”によって分けられます。
そして、マンションの部屋を貸して家賃収入があった場合は「不動産所得」にあたります。今回は、10種類の所得のうち、不動産所得のしくみや賢い節税方法について解説をします。

不動産所得の基本

不動産所得とは

不動産所得は、次の3つから生じる所得のことをいいます。

・土地や建物などの不動産の貸付から生じる所得
・借地権、地上権など不動産にかかわる権利の設定や貸付から生じる権利
・船舶や航空機の貸付から生じる所得

なお、不動産の譲渡による所得は不動産所得でなく、原則として譲渡所得に該当します。
本記事においては、不動産所得のうちの「土地や建物などの不動産の貸付から生じる所得」について解説をしていきます。具体的には、土地活用によりアパート・マンションなどを建築して貸付けた場合や、投資物件を購入し貸付けて所得を得る場合などがあります。

不動産の収入

不動産所得の主な収入には次の項目があります。

・家賃…アパート・マンション・貸家・事務所・店舗などを貸付けて得る収入です。賃料ともいいます。
・駐車場賃料…賃貸用建物の敷地内にある入居者用の駐車場、月極駐車場などからの収入です。
・地代…土地の貸付による収入です。借地・貸農地などの賃料で、駐車場賃料とは区別しています。
・礼金…住宅不足の時代に、大家さんに対する入居のお礼から始まった慣習と言われている入居時の一時金です。最近は礼金不要の賃貸住宅も増えています。
・更新料…契約更新の際に、次の契約期間の前払いという性格を持ち、賃貸借契約維持のための対価とされる収入です。ただし、賃貸借契約書に更新料の支払いが盛り込まれていなければ受け取ることができません。
・共益費/管理費…とくに、共用部分の維持管理(水道代、電気代、清掃代など)に使うために受領します。実際にかかった費用を除いた分が収入となります。
・太陽光発電による売電…最近は賃貸住宅の屋根に太陽光パネルを搭載し売電収入を得るケースがありますが、この場合、売電収入は不動産所得となります。なお、太陽光パネルを賃貸住宅の屋根ではなく土地上に直接設置している場合は、規模により雑所得か事業所得になります。

なお、敷金は期間満了時または解約時に返金するため収入ではなく預かり金にあたります。
また、保証金は全額返金する場合は収入にはなりませんが、返金しない額がある場合は、その部分は収入になります。

不動産の経費項目

不動産所得の経費には次の項目があります。

・公租公課…土地や建物の固定資産税や都市計画税、不動産を購入したときの不動産取得税などの税金です。なお、不動産取得税は、個人の場合には経費としますが、法人の場合には資産計上と経費計上の選択ができます。
・損害保険料…火災保険料、施設賠償責任保険などの保険料です。
・減価償却費…償却資産(建物、設備、外構など)の価値の減少分です。
・借入利子…借入金の返済額のうち、利子の部分です。
・修繕費…維持管理や修理のために支出される費用です。なお、品質の向上や建物の価値を高めるための支出は修繕費ではなく資産として計上します。
・管理委託費…不動産会社に管理を委託した場合の委託料です。
・水道光熱費…共用部分の電気代、維持管理のための水道料などです。
・その他交通費、雑費、振込手数料なども不動産経営に直接必要なものは経費となります。

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不動産所得の計算方法は?

不動産所得の計算

不動産所得は総収入額から必要経費を差し引いて計算します。総収入額とは、前章の不動産の収入項目の合計額です。
また、必要経費とは、不動産収入を得るため直接必要な費用のことをいい、前章の不動産の経費項目が該当します。
不動産所得の計算は、次の計算式によって行います。

不動産所得=総収入金額-必要経費

不動産所得と損益通算

不動産所得は総合課税の対象となっており、事業所得、給与所得など、ほかの総合課税の対象となる所得がある場合は、それらと合算し総所得金額を計算します。

不動産所得がマイナス(=損失・赤字)になった場合、ほかの所得の黒字部分から差し引くことができます。これを「損益通算」といいますが、10種類の所得のうち、損失を損益通算できるのは不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4つで、頭の文字をとって「ふじさんじょう」=「富士山上」と呼ばれることもあります。

とくに不動産経営の開始当初は、初期費用がかかり、借入金利子や減価償却費の金額が大きいため、不動産所得がマイナスになることがあります。例えば会社員の場合、確定申告をすることにより不動産所得のマイナス分を給与所得から差し引くことができ、所得税の還付が受けられ、翌年の住民税が安くなる節税効果が得られます。

ただし、年数が経つに従い、不動産所得がマイナスからプラスに転じたり、不動産所得が大きくなったりする場合もあります。そうなると超過累進税率によって、ほかの所得と合算したときに所得税が予想外に増えることもあるので、事前の事業計画と合わせて確認しておくことが重要です。
なお、不動産所得の経費のうち、土地取得のための借入金の利子部分は損益通算できません。そのため、投資物件を購入して賃貸経営を行い不動産所得が赤字になったとしても、その赤字が土地の借入部分の利子によるものだった場合は、ほかの所得から差し引けないため所得税の還付は受けられません。

事業としての賃貸経営

不動産所得がある場合の申告は?

会社員は、勤務先で源泉徴収や年末調整が行われるので通常は確定申告をする必要がありません。ただし、住宅ローン控除を受ける1年目や、医療費控除などの還付申告、一定の贈与を受けたり不動産を譲渡したりした場合には確定申告が必要です。
また、会社員でも不動産所得がある場合には確定申告をしなければなりません。確定申告は、翌年2月16日から3月15日までの間に行います。

事業的規模の賃貸経営とは?

一定規模以上の不動産経営を事業的規模といい、税務上さまざまなメリットが受けられます。事業的規模とは、アパート・マンションについては10室以上、貸家は5棟以上の規模のことです。ただし、室数が基準以下であっても、賃料が高額な場合は事業的規模が認められることもあるため、税務署や税理士などの専門家に相談してください。

事業的規模の賃貸経営のメリットは?

事業的規模の不動産貸付には次のようなメリットがあります。

①青色申告特別控除

青色申告をした場合、規模にかかわらず青色申告特別控除が受けられる制度があります。これは、不動産所得から必要経費を控除した金額から、さらに青色申告特別控除を差し引いて課税所得を計算することができるというしくみです。ただし、事業的規模に至らない小規模の賃貸経営の場合は10万円が限度となります。
それに対し事業的規模の場合は、最大65万円の青色申告特別控除を受けられるため、大幅な節税ができます。この控除を受ける場合は、正規の簿記の原則による記帳に基づいて作成した帳簿を提出する必要があります。
なお、2018年度の税制改正により、2020年から青色申告特別控除65万円を受けるための条件に“電子申告または電子帳簿保存を行うこと”が加わり、これらの条件を満たさない場合、控除額が55万円に減額されることになりました。

②青色専従者給与

家族への給与が「青色専従者給与」として認められます。ただし、勤務内容の実態からみて、妥当な金額までしか認められないため注意が必要です。

③回収不能家賃の経費計上

事業的規模の場合、入居者の滞納が続き、回収不能になってしまった家賃をその年の必要経費にできます。

④建物を解体したときの損失全額の経費計上

賃貸住宅などを解体したときの損失を全額経費計上することができます。またその年の所得から控除しきれない場合は、3年後まで繰り越しができます。

なお、事業的規模のデメリットとして、事業税がかかることがあります。事業税は、青色申告特別控除を差し引く前の所得から290万円を控除した残額に対して5%が課税されます。事業的規模の賃貸経営をする場合の注意点として理解しておく必要があります。

確定申告の工夫で所得税も節税できる

税金は所得にかかる

税金は収入にかかるのではなく、収入から必要経費を差し引いた所得に対してかかります。
そのため、必要経費が多ければ多いほど所得は少なくなり、結果として税金は少なくなります。事業的規模の賃貸経営は多くの必要経費を計上できることはお伝えしましたが、そのほかにも計算方法の工夫により、より多くの必要経費を計上する手法があります。

経費を増やす工夫

減価償却費の計算方法の工夫により当初の必要経費を増やすことができます。
建物や構築物などの償却資産は、年数の経過に伴う価値の減少分を1年ごとに計算して減価償却費として経費化することができます。

建物の耐用年数は構造により異なりますが、主な構造の税務上の耐用年数は次のとおりです。
・木造                  22年  償却率 0.046
・鉄骨(骨格材の肉厚が3ミリ超4ミリ以下)27年  償却率 0.038
・鉄骨(骨格材の肉厚が4ミリ超)     34年  償却率 0.030
・鉄筋コンクリート            47年  償却率 0.022

建物の取得価額を構造による耐用年数で割ると1年間の減価償却費になりますが、会計上、減価償却費は取得価額に償却率をかけて計算します。

例えば、3億円の鉄筋コンクリート(RC)造マンションの減価償却費は、

3億円×償却率0.022=660万円

660万円を減価償却費として必要経費にすることができます。

しかし、建物にはキッチンやユニットバスなどの給排水・衛生設備工事や電気配線や換気扇などの電気設備工事も含まれており、それらの設備工事の耐用年数は15年(償却率は0.067)となっています。
同じ取得価額の資産でも償却年数が短いと1年間の減価償却費は多くなり、償却年数が長いと減価償却費は少なくなります。

そこで建物全体を建物本体の耐用年数で計算するのではなく、建物本体部分と設備部分を分けて償却することで当初の減価償却費が増え、必要経費が増えます。

上記のマンションを、建物本体(仮に70%とする)と設備(仮に30%とする)を分けて計算すると、

建物本体部分 3億円×70%×0.022=462万円
設備工事部分 3億円×30%×0.067=603万円
462万円+603万円=1,065万円

建物本体と設備を分けたほうが、減価償却費が405万円多く計上でき、必要経費が増えることになります。

ただし減価償却費について、期間は短くても1年当たり多くの経費を計上するか、1年当たりの経費は少なくても長い期間をかけて計上するかの違いがありますが、最終的な減価償却費の合計額はどちらも同じです。

上の例の場合、建物と設備を分けると当初は減価償却費を多く計上できますが、設備の償却が終わる15年目以降は設備の減価償却費はなくなるので、減価償却費は大きく下がってしまいます。
そのため、賃貸経営を行う人の状況より減価償却費の分け方を検討することが大切です。

例えば会社員の場合、給与所得が多い現役時代には減価償却費を多く計上し、引退して年金収入のみになれば、減価償却費が減り不動産所得が増えても影響が小さいと判断できる場合、建物本体と設備を分けて減価償却費を計算する方法が有効と考えられます。

青色申告のメリット

青色申告の大きなメリットは、実際にはかかっていない必要経費を最高65万円まで控除できることにあります。詳細は前章で解説していますのでお読みください。

法人化のメリット

マンション経営の規模が大きくなり、所得が増えると所得税や住民税も増えていきます。
そのため、一定以上の不動産所得がある場合には、節税を目的とした法人化も視野に入ってきます。

法人を設立することで、不動産オーナーが得ていた不動産所得が、法人からの役員報酬という形で給与所得に変わります。そのため、役員が受ける報酬に対しては給与所得控除を受けることができます。
また、家族など複数の人を役員とすることにより、それぞれが給与所得控除を受けることができるため、所得控除が増え、超過累進税率の緩和も期待できます。

法人の形態には不動産管理方式、転貸方式(サブリース方式)、不動産所有方式があります。

①管理委託方式

法人が賃貸物件の管理業務を行い、不動産オーナーは入居者からの家賃のなかから管理委託料を法人に支払う方式です。法人は不動産オーナーや親族に役員報酬を支払います。

②転貸方式(サブリース方式)

不動産オーナーが賃貸マンションを一括で法人に貸付ける方式で、サブリース方式ともいいます。
法人はマンションを入居者に転貸し家賃を受け取り、そこから不動産オーナーに賃貸料を支払います。また法人の収益はオーナーや親族に役員報酬として支払います。

②不動産所有方式

法人がマンションを所有するため、家賃収入は法人の売上となり、そこからオーナーや親族に役員報酬を支払う方式です。
所得税の節税という観点からは、不動産管理方式と同様の効果がありますが、不動産所有方式には、所得税節税以外にも、相続税の節税対策としての役割があります。
不動産オーナーの相続人(子などの親族)を株主として設立した法人が、所有するマンションの家賃収入から報酬を親族に支払うことにより、不動産オーナーの財産の増加を抑えるとともに、親族への資産移転により納税対策を図ることができます。
また、不動産オーナーの土地に法人の建物が建っている場合、法人は不動産オーナーに「相当の地代」を支払い、かつ土地の無償返還に関する届け出書を提出することにより土地の相続税評価額を20%減額することができます。

法人化には多くのメリットがありますが、デメリットも知っておく必要があります。 デメリットには、設立時に費用がかかること、法人の業績にかかわらず毎年約7万円の法人住民税が課税されること、会計や社会保険など法人の運営手続きが複雑になり税理士などの専門家への経費も増えること、などがあげられます。
また、法人を設立する場合には、管理委託方式の管理費、転貸方式の管理会社の賃料が適正でない場合、税務署長の裁量により認められない恐れがあります。設立・運用については税理士などの専門家に相談しながら進めるようにしてください。

賃貸経営は、メインの事業計画はもちろんですが、税金面もしっかりと押さえておくことが大切です。 必要な知識や情報を上手に活用して、賢い賃貸経営を行いましょう。