借地権設定による土地活用と賃貸経営の違いとは?メリット・デメリットを比較

土地活用というと、マンションやアパートを建設して、家賃収入を得る方法が良く知られていますが、その他にも借地権を設定し、土地だけを貸して地代収入を得る方法があります。

借地権のなかでも契約期間を定めた「定期借地権」は、契約期間満了後に確実に土地が手元に戻り、建築費用を借り入れせずに土地活用できる点が魅力です。

この記事では、定期借地権をはじめとした借地権の種類や、メリット・デメリットを賃貸経営と比較し、適切な方法での土地活用を提案します。土地活用の方法にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

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土地活用の方法は大きく分けて2つ

土地活用の方法には、大きく分けると次の2つがあります。

・建物を建てて貸す方法
・借地権を設定して土地を貸す方法

建物を建てて貸す方法は、賃貸経営によって家賃収入を得る事業で、オーソドックスな土地活用方法です。一方、土地は建物を建てずに貸すこともでき、そのなかでもメリットが大きいのが、借地権を設定して土地を貸す方法です。

ここでは、それぞれの概要について解説します。

建物を建てて貸す方法

土地のオーナー様自身が建物を建てて入居者を募集し、家賃収入を得る方法です。代表的なものとして、マンション・アパートなどの賃貸住宅や、店舗・オフィスビルなどの事業用不動産の賃貸が挙げられます。

建物を建てて貸す賃貸経営は、家賃収入がすべてオーナー様に入るのが特徴です。賃貸経営のノウハウは必要になりますが、入居者を確保できれば、安定的な収入が期待できるでしょう。建築費用などの投資額が大きくなる分、大きな収益が期待できることから、土地活用の主流といわれています。

借地権を設定して土地を貸す方法

一方、建物を建てずに、土地のみを貸す土地活用も可能です。建物を必要としない資材置き場や駐車場などの活用方法のほか、借地権を設定して、建物を建てたい人に土地を貸す方法があります。

土地活用にあたり、大きなリスクを取りたくないと考えるオーナー様もいらっしゃるでしょう。借地権設定による土地活用は、長期間にわたり安定した地代収入を得られます。建物の建築費用のために借り入れなどの資金調達を必要とせず、土地の収益化が可能です。

借地権の4つの種類と特徴

借地権には、以下4つの種類があります。

・普通借地権
・一般定期借地権
・事業用定期借地権
・建物譲渡特約付借地権

借地権とは、賃貸借契約によって土地の借主が土地を利用できる権利のことで、借地借家法で定められています。

借地権は、契約更新が可能な普通借地権と、契約更新のない定期借地権に分けられ、定期借地権には、一般定期借地権・事業用定期借地権・建物譲渡特約付借地権の3種類があります。

なお、土地活用では、より高い地代を設定でき柔軟な運用が可能な「事業用定期借地権」での運用が一般的です。

普通借地権

普通借地権とは、契約更新が可能な借地権です。契約期間は30年以上で、初回更新後は20年、以降の更新は10年ごとに行ないます。

普通借地権の契約更新は、借主が希望する場合、貸主側に正当な理由がない限り拒否できません。そのため、一度貸し出すと、半永久的に土地が貸主の手元に戻らないことが想定されます。

このように、普通借地権は旧借地法に基づく借地権がベースとなっており、借主の権利が強い契約形態です。そのため、現在では1992(平成4)年8月1日施行の新法である借地借家法で新設された、契約更新がない定期借地権を設定して運用するのが一般的です。

一般定期借地権

一般定期借地権とは、建物の利用目的を問わない借地権のことで、通常、住宅用地として貸し出す際に用いられることが多い権利です。一般定期借地権の契約期間は50年以上で、借主は契約期間満了後、土地を更地にして貸主に返還する必要があります。

一般定期借地権は契約期間が長いため、長期的に安定した地代収入を得られる点が特徴です。一般定期借地権が設定された土地の多くは、戸建て住宅や分譲マンション、居住部分が発生する店舗併用住宅、有料老人ホームなどの建築用地として利用されます。

事業用定期借地権

事業用定期借地権とは、事業を目的とする土地に対して設定される借地権です。契約期間は10年以上50年未満で、用途に応じた期間設定ができます。

土地の立地が事業用地に適する環境なら、高い賃料を設定しやすく、収益性が期待できるでしょう。

なお、事業用定期借地権が設定された土地は、住居用途での利用は認められません。コンビニやロードサイド店舗、ショッピングセンター、オフィスビルなどの事業用地として貸し出せます。

建物譲渡特約付借地権

建物譲渡特約付借地権とは、借地権設定から30年以上経過後、貸主が建物を買い取ることを条件とするものです。

建物譲渡特約は、一般定期借地権にも、30年以上の契約期間のある事業用定期借地権にも付けられ、貸主が建物を買い取った時点で、借地契約を終了させることができます。

建物譲渡特約のメリットは、住宅に利用可能な一般定期借地権において、契約期間を短くできる点です。そのため、分譲マンションなどに適していますが、実際の活用事例は多くありません。

なお、建物に賃借人がいる場合は、借地権が消滅したあとも引き続き借家として利用させなければなりません。また、建物が不要になったときには、オーナー様に取り壊しの費用負担が発生します。

土地活用で「賃貸経営」を選ぶメリット・デメリット

借地権による土地活用と比べて、オーナー様自身が建物を建てて賃貸経営をする場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット①借地よりも大きな収益が期待できる
メリット②借地と比べて節税効果が高い

デメリット①経営リスクがある
デメリット②転用に制約が生じる

定期借地権の設定による土地活用を考えるとき、「自身でアパートやマンションなどを建てて賃貸経営をするのと、どちらが良いだろうか」と悩むオーナー様もいるでしょう。そこで、適切な判断が行なえるよう、賃貸経営による土地活用のメリットや注意点について解説します。

メリット

土地活用で賃貸経営を選ぶメリットは、借地よりも大きな収益が期待できることと、節税効果が高いことです。

借地よりも大きな収益が期待できる

オーナー様自身が建物を所有して賃貸経営を行なえば、地代収入よりも大きな家賃収入を得られる可能性があります。

管理の手間はかかりますが、都心部などの立地条件の良い物件や、高い家賃が設定されている事業用物件なら、大きな収益が期待できるでしょう。

借地と比べて節税効果が高い

土地が賃貸住宅用地として使用されるとき、土地のオーナー様が建物を所有している場合でも、借地権を設定している場合でも、固定資産税の節税効果が期待できます。

ただし、相続税においては、オーナー様自身で賃貸経営に取り組むほうが、高い節税効果につながるでしょう。

建物を所有する場合、建物と土地の評価額が低くなるため、相続税が軽減されます。定期借地権が設定されている土地も、借地権の残存期間に応じた評価減が認められていますが、建物を所有する場合と比較すると節税効果は低めです。

デメリット

賃貸経営を選べば、オーナー様自ら事業に取り組まなければならず、経営リスクが生じます。また、転用に制約が生じるのもデメリットです。

経営リスクがある

賃貸経営は事業のため、当然ながら損失が発生するケースがあります。

空室が発生すると、想定していた家賃収入が得られなくなり、赤字に陥るかもしれません。また、建物の老朽化は避けられないうえ、災害などで思わぬ被害を受け、大きな修繕費が発生する可能性もゼロではないでしょう。

賃貸経営にともなう多くのリスクは、適切な対策で回避可能ですが、借地権のように、貸し出すだけで安定した収入が得られるわけではないことを、念頭に置く必要があります。

転用に制約が生じる

賃貸経営による土地活用は、まとまった費用を投じて建物を建設するため、数十年単位の運用となるのが一般的です。特に賃貸住宅の場合は、入居者の権利が保護されます。退去してもらうにあたり、立ち退き料の支払いが発生するだけでなく、トラブルに発展するリスクもあるでしょう。退去が完了したあとは、建物の取り壊しも必要です。

賃貸経営では、将来的な転用がまったくできないわけではありませんが、実際に転用するにはさまざまなハードルがあります。

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「定期借地権の設定」による土地活用のメリット・デメリット

「定期借地権の設定」による土地活用のメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット①土地が戻る時期が明確
メリット②建築費用の借り入れが不要
メリット③管理の手間が不要
メリット④安定性が高い
メリット⑤節税効果が期待できる

デメリット①収益性は賃貸経営に比べると劣る
デメリット②期間中は転用できない

定期借地権の設定による土地活用のメリットは、普通借地権と異なり土地が戻る時期が明確でありながら、賃貸経営のような建物建築にともなう新たな借り入れや、経営の手間・リスクがないことです。また、一定の節税効果が期待できます。

一方、定期借地権での運用は、賃貸経営と比べると収益性は劣るとされるうえ、借地権の契約期間中は他用途に転用できないのがデメリットです。

メリット

定期借地権の設定による土地活用のメリットについて、詳しく見てみましょう。

土地が戻る時期が明確

定期借地権は、普通借地権と異なり契約更新がなく、契約期間が満了すれば確実に土地が戻ります。そのため、土地の使い道や、先々発生する相続を見据えたライフプランを立てやすくなるでしょう。

建築費用の借り入れが不要

定期借地権による土地活用では、オーナー様は土地だけを貸し出し、建物を建てるのは借主になります。

オーナー様自身は建物を建てる必要がないため、建築費用の借り入れや自己資金の用意は不要です。

管理の手間が不要

オーナー様自身が建物を建てて賃貸経営を行なう場合、建物管理やメンテナンス、入居者募集などの手間がかかります。作業自体は管理業者に一任できますが、運用方針はオーナー様が決定しなければなりません。

定期借地権による土地活用なら、賃貸経営を手がけるのは借主になります。オーナー様は決まった地代を受け取るだけで良いため、手間は一切かかりません。

安定性が高い

定期借地権は、契約した長期間にわたり、決められた地代収入を受け取れます。景気などに大きく左右されず、安定した土地活用が可能です。

基本的には、借主の事業収益性に影響を受けることもありません。

節税効果が期待できる

定期借地権が設定されている貸宅地は、借地権の残存期間に応じた相続税の評価減が認められているため、相続税の節税効果が期待できるでしょう。一般定期借地権の場合の相続税はおおよそ55%~75%、それ以外の定期借地権の場合は5%~20%軽減されます。

なお、オーナー様の土地を借主が住宅用地として利用する場合には、固定資産税・都市計画税についても軽減の対象です。

デメリット

定期借地権の設定による土地活用には、デメリットもあります。メリットと併せて把握しておきましょう。

収益性は賃貸経営に比べると劣る

定期借地権による地代収入の相場は、住宅用途だと土地代の2%~3%、事業用途だと4%~5%程度です。オーナー様自身が建物を建てて賃貸経営を行なったときの賃料収入と比べて、少なくなる点はデメリットといえます。

期間中は転用できない

定期借地権による契約期間中は、オーナー様に土地を使用する権限はなく、契約によっては50年以上もの長期間にわたり、土地を貸さなければなりません。仮に、契約期間中により良い土地活用方法を見つけても、借地権を解除してほかの用途に転用することは不可能です。

定期借地権の設定による土地活用が向く3つのケース

定期借地権の設定による土地活用に向いているのは、次の3つのケースです。

・リスクを抑えた土地活用を希望している
・将来的に土地を自己使用したい
・手元資金を確保・運用したい

ここまで見てきたように、建物を建てて賃貸経営を行なうことにも、定期借地権を設定して土地だけ貸すことにも、それぞれメリット・デメリットがあります。そのため、土地活用の目的や状況に合った活用方法を選択することが重要です。

土地活用に定期借地権の設定が向くケースには、リスクを抑えた土地活用を希望している場合や、将来的に土地を自己使用したい場合、手元資金を確保・運用したい場合が挙げられます。

リスクを抑えた土地活用を希望している

遊休地を活用するのが目的で、積極的な収益化を望んでいないなら、リスクの低い定期借地権の設定がおすすめです。

賃貸経営のようにオーナー様自身が建物を建てる必要がないため、土地活用にあたり新たな借り入れを必要としません。また、経営の手間やリスクを負うことなく、安定した地代収入を得られます。

将来的に土地を自己使用したい

オーナー様自身がマンションやアパートの経営に取り組んでいる場合、土地を自己使用する必要性が出てきたときには、入居者の立ち退き交渉や建物の解体が必要になります。

定期借地権なら、契約期間満了後は土地が更地で手元に戻るため、次の活用が容易です。また、借主がマンションなどの賃貸経営を行なっていた場合は、土地を更地にせず、オーナー様自身が貸借人を引き継いで賃貸経営を行なう方法もあります。

手元資金を確保・運用したい

所有する土地に、オーナー様自身が建物を新たに建設するには、まとまった費用が必要です。

土地に借地権を設定して貸し出す方法なら、建築費用は借主が負担するため、オーナー様の金銭負担は必要ありません。手元に資金を確保しておきたい方にも向いています。

また、借地権の契約を結ぶ際、借主から保証金や前払い賃料を受け取れるため、これらを運用できるのも借地権のメリットでしょう。

なお、手元資金を確保するなら、建設協力金を活用する選択肢もあります。建設協力金とは、土地の借主(テナント)が貸主(オーナー様)に対して、建物の建設資金を差し入れるものです。オーナー様は、この建設協力金をもとに建物を建設して、テナントに賃貸します。

建設協力金のメリットは、オーナー様の手元資金が少なく済むこと、テナントが建設資金をオーナー様に貸している状態になるため、途中解約リスクが少なくなり、長期の契約が見込めることです。長期契約が見込めれば、キャッシュフローの計画も立てやすくなるでしょう。

ただし、テナントが退去したあとの再リーシング(テナントの再募集)が困難になりやすい点はデメリットです。また、建物の所有者は土地のオーナー様になるため、建物を解体する費用はオーナー様の負担となります。

まとめ

土地活用にはさまざまな方法がありますが、借地権設定による土地活用は、オーナー様自身が建物を建てて賃貸経営に取り組むのに比べて、安定性が高いのが特徴です。建築費用のための借り入れや経営の手間・リスクを抱えることなく、長期にわたり地代収入を得られます。

一方、賃貸経営を選べば、より多くの収益を狙えるほか、借地権設定時よりも相続税に関わる評価で有利になるなどのメリットが得られるでしょう。

土地活用のより良い方法は、土地活用の目的やオーナー様のご意向によっても異なります。土地活用をご検討中の方は、ぜひ一度、生和コーポレーションにご相談・お問い合わせください。