不動産相続の手続きや注意点、活用方法などを紹介

親や家族が亡くなったあと、悲しみに暮れる間もなく発生するのが相続の手続きです。土地や建物、その他の財産を相続する場合に、どのような手続きを行ない、相続税がどの程度かかるのか、不安に感じる方もいることでしょう。

この記事では、不動産相続を中心とした遺産相続の手続きの流れや、相続税の計算方法などを取り上げながら、不動産相続時に注意すべき点を解説します。

また、相続の手段として不動産を売却する際の流れや、不動産でできる相続税対策についても取り上げますので、参考にしてください。

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不動産の相続手続きをするときの流れ

初めに、相続が発生した場合に必要な手続きと相続完了までの流れを、「遺言書の有無を確認」「法定相続人を確定」「相続財産を確定」「必要書類の準備」「遺産分割協議と書類作成」「相続不動産の名義変更(相続登記)」「相続税の納付」という7つのステップに分けて、解説しましょう。

ここで取り上げるような不動産を含む相続の手続きは、自分で行なうこともできますが、専門用語も多く慣れていない方には大変な作業となります。

全体の流れを知ったうえで、実際に相続が発生した際には、司法書士や税理士・弁護士といった専門家に早めに相談するのがおすすめです。

では、手続きの流れを順番に解説しましょう。

ステップ1.遺言書の有無を確認

被相続人が亡くなられると、その日が相続開始日となり、相続が発生します。そして基本的には相続開始から10ヵ月以内に、相続税を納付しなくてはなりません。

相続手続きの第一歩として、まずは被相続人の遺言書があるかどうかを確認してください。なお、相続の手続き上では、亡くなられた方を「被相続人」、亡くなられた方の財産を相続する方を「相続人」と呼びます。

遺言書の有無を事前に家族などが聞いていれば話が早いですが、そうでない場合は、自宅内などを探さなくてはなりません。遺言書の有無によって、相続手続きの内容が大きく異なる可能性があるからです。

遺言書を探す際には、被相続人が日頃から使用していた机や引き出し、タンス、自宅の金庫、貸金庫など、保管しそうな場所をあたってみましょう。

もしも、公正証書遺言(公証人に口頭で遺言を伝えて作成してもらう遺言書)を残している可能性があれば、公証役場の遺言検索システムで探すことができます。

被相続人が自分で書いて作成した「自筆証書遺言」は、勝手に開封することはできません。遺言書の存在を確認次第、速やかに家庭裁判所に遺言書を提出し、検認を受けなければならないとされています(民法第1004条)。

自宅などから被相続人が作成したと思われる遺言書が出てきた場合は、その場で開けたりせず、家庭裁判所の検認を受けるようにしてください。

このあとの項目は遺言書がない場合の進め方を中心に解説しています。遺言書がある場合は、遺言書の内容に沿って相続手続きを進め、遺言書がなければステップ2の手続きに進んでください。

ステップ2.法定相続人を確定する

被相続人の遺言書がない場合は、まずは「法定相続人」を確定する作業が必要です。法定相続人とは、民法で定められている「相続の権利がある人」を指します。

誰が相続人になるのかを調べるには、まず、被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や除籍謄本を取得します。そこから、被相続人と親族関係となる人(親や子、兄弟姉妹、養子など)をすべて洗い出しながら、法定相続人を確定させてきます。

法定相続人では、被相続人の配偶者は常に相続人として扱われ、それ以外の親族は相続人になる順位が決められています。相続人になる順位は次のとおりです。

例えば、被相続人に配偶者と子供がいる場合、法定相続人は配偶者と子供全員です。子供がなく、父母が生きている場合は配偶者と父母が法定相続人になり、配偶者がなく子供も父母もいない場合は、兄弟姉妹が法定相続人として確定します。

相続順位 血族の種類
常に相続人 被相続人の配偶者
第1順位 被相続人の子供 子供が亡くなっている場合は孫、ひ孫
第2順位 被相続人の父母 父母が亡くなっている場合は祖父母
第3順位 被相続人の兄弟姉妹 兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥、姪

なお、法定相続人ごとに相続できる割合(法定相続分)についても定められており、民法にしたがって配分する場合は次のようになります。

相続の例 法定相続分
相続人が配偶者と子供 配偶者が1/2
子供が1/2 ※
※子供が複数いる場合は等分する
相続人が配偶者と父母 配偶者が2/3
父母が1/3 ※
※該当者が父母2名の場合は等分する
相続人が配偶者と兄弟姉妹 配偶者が3/4
兄弟姉妹が1/4 ※
※該当者が複数いる場合は等分する

ステップ3.相続財産を確定する

法定相続人の確定と合わせて、相続財産を確定し、財産目録を作成します。

相続財産というと預貯金や不動産のイメージが先行しがちですが、相続財産にはプラスの財産とマイナスの財産が存在し、そのすべてを洗い出す必要があります。

具体的には、次のようなものが相続財産に該当します。

相続財産 具体例
プラスの相続財産 預貯金、不動産、有価証券(株式や国債など)、現金、宝石、貴金属、貸付金、ゴルフ会員権など
マイナスの相続財産 住宅ローン・自動車ローン・カードローンなどの借入金、未払いの税金や光熱費、保証債務など

この記事で取り上げている不動産の相続では、市区町村から届いている固定資産税の納税通知書を確認することで、おおむね把握できます。

ただし、固定資産税などが発生していない不動産を所有している可能性がある場合は、納税通知書を発行している市区町村で「土地・家屋名寄帳」という不動産所有の一覧表を取得し、洗い出しをしましょう。

相続財産を確認した結果、借金などのマイナスの財産が多く、相続のメリットがない場合は、相続自体をやめる「相続放棄」という方法があります。相続放棄は相続発生から3ヵ月以内という期限があるため、早めに専門家に相談し、手続きを進めてください。

なお、被相続人が毎年確定申告を行なっていた場合や、年金所得者などで還付金がある場合などは、故人の確定申告が必要になります。

申告の結果、納税が発生する場合は、相続発生から4ヵ月以内に行なう必要があるので、相続財産確定のステップで進めておきましょう。なお、還付申告の場合は4ヵ月以降でも手続き可能です。

ステップ4.必要書類の準備

ここまでのステップで、相続人の確定と、相続財産の内容が明らかになりました。
いよいよ具体的な相続の手続きに入るにあたり、必要な書類を抜けがないよう準備しましょう。

不動産相続で必要になるおもな書類
・被相続人の戸籍謄本(出生時から死亡時まですべて)
・被相続人の住民票の除票(本籍記載のあるもの)

・相続人全員の戸籍謄本(被相続人の亡くなった日以降のもの)
・相続人全員の印鑑証明書

・不動産の登記事項証明書
・不動産の固定資産評価証明書
・不動産を相続する相続人の住民票

・遺産分割協議書

ステップ5.遺産分割協議と書類作成

遺産分割協議とは、文字どおり、故人の遺産を相続人がどのように分けるかを決定する作業のことです。

「協議」とはいうものの、全員が直接対面して相談する必要はありません。重要なのは、どのような形で相談したかではなく、遺産の分割方法に全員が納得・合意し、遺産分割協議書を作成する点にあります。

遺産分割協議書に相続人全員の署名・実印の捺印がそろうことで、相続の内容が決定し、不動産の名義変更などといった具体的な相続の手続きに入ります。

相続人だけで遺産分割協議を進めた場合、話がまとまらなかったり、揉めごとになったりしてしまうと、なかなか遺産分割協議書の作成に至ることができません。そのような場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることもできますが、あらかじめ相続や法律の専門家に相談するのも一案でしょう。

ステップ6.相続不動産の名義変更(相続登記)

遺産分割協議書が作成され、不動産の相続が発生した場合は、相続不動産の名義を被相続人から相続人に変更する「相続登記」という手続きを行ないます。

相続登記は、司法書士などの専門家に依頼するケースが一般的ですが、自分で行なう場合は、ステップ4で取り上げた必要書類をそろえ、相続登記申請書を作成して、法務局に提出します。

なお、現時点で手続きの期限はありませんが、不動産の所有者不明問題など解決のため、民法等の改正により、2024年(令和6年)4月1日から相続登記の義務化が決定しました。

これにより取得を知ってから3年以内の相続登記が義務付けられ、理由なく悪質に逃れた場合は、10万円以下の過料が発生します。

また、今回の改定では試行前に発生した相続に関しても適用される点に注意が必要です。相続が発生しているのに相続登記していない不動産がある場合は、施行もしくは相続発生・所有権取得から3年以内に、相続登記を済ませるようにしてください。

ステップ7.相続税の納付(10ヵ月以内)

相続の内容が確定すると、内容にともなって、相続人ごとの相続税が確定します。相続税申告書を作成し、相続税納付を行なってください。

相続税納付は、「相続を知った日の翌日から10ヵ月以内」と定められています。期限内に申告・納付できない場合は、加算税や延滞税がかかってしまいますので、注意しましょう。

不動産相続にかかる相続税と計算方法

ここでは、相続税が課される財産について整理しながら、不動産の相続税算出に関わる評価額について算出方法を交えながら紹介します。併せて、相続税の控除と申告が必要なケースについて解説します。

相続税が課される財産

相続税の対象になる財産には、被相続人の所有財産や、みなし相続財産、生前贈与分、暦年課税適用財産が含まれます。

被相続人(亡くなった人)が所有していた財産

被相続人が所有していた財産とは、土地・建物といった不動産や、株式・公社債などの有価証券、預貯金・現金、その他金銭に見積もり可能なものすべてが該当します。

みなし相続財産

みなし相続財産とは、被相続人が亡くなったあとに支払われる生命保険金や退職金などを指し、相続によって受け取りが発生した財産とみなされます。

ただし、一定の非課税枠があるため、以下の算式で算出してください。

みなし相続財産の非課税枠=500万円×法定相続人の数×(その相続人が取得した保険金などの合計額÷相続人全員が取得した保険金などの合計額)

例えば、法定相続人が3人(配偶者と子供2名)で、1,000万円の保険金のうち、配偶者が500万円受け取ったとしましょう。その場合の非課税枠は次のとおりです。

500万円×3×(500万円÷1,000万円)=750万円

つまり、この場合の保険金は、課税対象にはなりません。

相続時精算課税を選択していた生前贈与分 h4>

原則、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子供または孫に生前贈与し、相続時精算課税制度を選択している場合、その贈与分の財産は相続時の課税対象となります。

被相続人から相続開始前3年以内に取得した暦年課税適用財産(贈与)

被相続人が亡くなる前の3年以内に贈与された暦年課税適用財産は、相続財産となり、相続税の課税対象です。

債務と葬式費用は控除できる

相続税の課税対象になるものを挙げましたが、一方で控除対象になるものも知っておきましょう。先に解説した「相続の流れ」のなかで取り上げた「マイナスの相続財産」が対象で、借金や未払金などの債務が該当します。

また、被相続人の葬式費用のうち、お寺・葬儀社への支払いや、通夜の費用などは控除対象となります。ただし、香典返しの費用など、控除に含まれない費用もありますので、ご注意ください。

不動産の相続税評価額とは?

土地や建物といった不動産を相続した場合は、相続税の計算に使うための「相続税評価額」を算出します。相続税の計算は時価ではなく、評価額を用いるので注意してください。

では、土地の評価額と建物(戸建て)の評価額、建物(マンション・アパート)の評価額について、順に算出方法を紹介しましょう。

相続する土地の評価額

相続した土地の評価額は、「路線価方式」または「倍率方式」の評価方法を用いて計算されます。

【路線価方式】
路線価方式とは、路線価を用いて評価額を決める方式のことです。路線価は、道路(路線)に接している土地の1平方メートルあたりの価額を指しており、国税庁がホームページで公開している「路線価図」で確認してください。

路線価方式は、次の算式で計算します。なお、調整率とは土地の形状に応じて補正するための数値で、これも国税庁のホームページで確認しましょう。

土地の評価額=路線価×調整率×面積

例えば、路線価が150万円、面積が200平方メートル、調整率が1.0%の場合、評価額は次のようになります。

150万円×1.0×200平方メートル=評価額3億円

【倍率方式】
路線価が定められていない地域の土地の場合は、固定資産税評価額に、国税庁で定めている評価倍率をかけて評価額を算出する、倍率方式が用いられます。

土地の評価額=固定資産税評価額×評価倍率

例えば、固定資産税評価額が3億円、評価倍率が1.1倍の場合、評価額は次のようになります。

3億円×1.1=評価額3億3,000万円

なお、詳しくは後述しますが、被相続人が居住用もしくは事業用に使用していた土地で条件を満たせば、「小規模宅地等の特例制度」により評価額を下げられることを知っておきましょう。

【土地が貸地の場合】
相続した土地を第三者に貸している場合(A)や、土地の上に貸家が建っている場合(B)は、評価額が低くなる計算方法が採られます。それぞれの計算は以下のとおりです。

(A)貸地の場合の相続評価額=(自用地)評価額×(1-借地権割合)

借地権割合は国税庁で定められており、仮に70%とする場合、評価額が3億円の土地であれば、次のように計算してください。

3億円×(1-70%)=3億円×30%=貸地の評価額9,000万円

(B)貸家建付地(賃貸物件が建っている土地)の場合の相続税評価額
=(自用地)評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

賃貸物件が建っている土地の場合は、借地権割合、借家権割合、賃貸割合を考慮して評価額を計算します。借家権割合は一律30%と決められており、賃貸割合は、建物のなかで貸している部屋の床面積が占める割合から算出してください。

例えば、評価額3億円の土地が貸家建付地になっていて、借地権70%、借家権30%、賃貸割合が50%の場合は、次のように計算します。

3億円×(1-70%×30%×50%)=3億円×89.5%=貸家建付地の評価額2億6,850万円

相続する建物(戸建て)の評価額

戸建ての建物を相続した場合で、被相続人が居住したり事業に使用したりしていた場合は、固定資産税評価額により相続評価額を決定します。

つまり、固定資産税評価額が1億円の建物の場合は、相続税評価額も1億円です。

【戸建てを貸している場合】
戸建ての住宅を賃貸物件として第三者に貸している場合は、借家権割合を差し引いた額になるので、次の方法で計算しましょう。

戸建ての貸家の相続税評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合)

借家権割合とは、借りた人がその家屋を使用する権利のことで、一律30%と定められています。例えば、固定資産税評価額が1億円の建物を貸家にしている場合は、以下のとおりです。

1億円×(1-30%)=1億円×70%=評価額7,000万円

相続する建物(マンション・アパート)の評価額

相続する建物がマンション・アパートであれば、賃貸物件と考えられますので、固定資産税評価額から借家権割合と賃貸割合を差し引いた金額が評価額になります。

賃貸マンションなどの相続税評価額
=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

例えば、固定資産税評価額が3億円の建物で、借家権割合が30%、賃貸割合が50%の場合は、以下のとおり。

3億円×(1-30%×50%)=3億円×85%=賃貸マンションなどの評価額2億5,500万円

相続税申告が必要な場合

不動産の評価額や、その他の相続財産の評価額が決定したら、相続税を計算しましょう。

相続税には「遺産に係る基礎控除額」が定められており、以下の計算式で算出してください。

遺産に係る基礎控除額=3,000 万円 +(600 万円×法定相続人の数)

例えば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額はこのようになります。

3,000万円+(600万円×3)=4,800万円

この場合、相続評価額の総合計から4,800万円を引いた額が課税対象の金額です。相続評価額の合計が基礎控除額に収まっている場合は、相続税は発生しません。

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不動産の相続をする際の注意点

不動産は預貯金などとは違い、きれいに遺産分割しにくい財産といえるでしょう。したがって、相続人同士で円滑に分割できる方法を決めなくてはなりません。ここでは不動産の共有や遺産分割方法、相続税対策について、不動産相続の注意点を取り上げます。

不動産の共有は避ける

土地や建物などの不動産は、誰が相続するかを決めるまでは、相続人全員での共有財産(遺産共有)となっています。

遺産共有のままで保有し続けることも不可能ではありません。ただし、将来的に処分することになった場合は、相続人全員の同意が必要となります。

また、共有状態のままで相続人の誰かが亡くなると、その不動産に対してさらに相続が発生し、関わってくる相続人の数が増えて複雑になってしまいます。

そのような事態を避けるためにも、不動産は特定の相続人が引き継いだほうが良いといえるでしょう。

遺産分割方法にはさまざまな種類があることを把握しておく

不動産の遺産分割方法には、一般的な方法として、共有、現物分割、代償分割、換価分割という4つの種類があります。順に紹介したうえで、換価分割する際の手順についても解説しましょう。

共有

先ほども述べたように、不動産を相続人全員で相続し、共有名義にしておく方法です。相続人の人数がさほど多くなく、円満な関係を築けている場合はそのままにしておくのも良いでしょう。

ただし、将来的に売却するなら、名義人全員の同意が必要になることから、揉めごとにつながりやすいといわれています。また、共有名義で放置すると、次の世代の相続で複雑化しやすい点にも注意してください。

現物分割

不動産を相続人の数で分割して相続する方法です。しかし、土地や建物をきれいに分割するのは難しく、例えば、土地相続の場合など、分割しても十分な広さがないなどで活用できない場合があります。相続人全体で相談のうえ、円満に分割できる場合は、検討してみましょう。

代償分割

相続人のうち、1人もしくは一部の人が不動産を相続し、その代償として、不動産を相続しなかった人に相応の土地代・建物代を現金で支払う方法です。現物分割が難しい場合や、不動産よりも現金での相続を希望する人がいる場合などに有効でしょう。

換価分割

相続した不動産を売却して現金化し、相続人で分割する方法です。不動産を分割しにくい場合や、居住するなどの活用する見通しがない不動産である場合などは、有効な選択肢の一つになります。不動産の売却先が見つかったうえで、相続人全体が売却に同意する必要がありますが、現金化することでわかりやすい相続が可能となるでしょう。

円滑に進めるなら代償分割や換価分割を!

相続した不動産をトラブルなく円滑に分割するには、代償分割や換価分割を検討するのも一つの方法といえます。

不動産においては、誰も住む予定がない場合や、活用する見通しがない場合でも、維持管理費や、固定資産税・都市計画税といった税金は発生します。今後のリスクを減らすためには、売却して現金化したうえで相続する換価分割がおすすめです。

換価分割を行なうには、まず遺産分割協議で相続人ごとの相続分を決定したのち、代表の1名が名義を引き継いで相続登記を行ないます。そのうえで不動産会社に売却を依頼し、売却後は代金を遺産分割協議にしたがって分割してください。

相続税対策は相続前に検討

相続後に分割が難しい不動産ですが、一方で相続税対策に役立つのも不動産です。土地や建物(戸建て・マンション・アパート)を活用することで、相続税の軽減に役立つかもしれません。

現金を使って建物を建てる方法や、建物を貸して土地の評価を下げる方法、小規模宅地等の特例制度について解説しましょう。

現金を建物化して相続税評価額を圧縮

預貯金といった現金を相続する場合は、額面そのままの評価額になってしまいます。そのような場合、預貯金を使って建物を建てることで、実際にかかった建築費よりも相続税評価額を圧縮しましょう。

新築の場合は、評価額を建築費の60%程度にすることが可能になるため、一例として建築費に3億円かかった場合、建物の評価額は1.8億円程度に圧縮できます。

建物を貸して土地を貸家建付地することで評価額を減額

土地に賃貸物件を建築することで、その土地の評価額を下げることも可能です。その場合、土地は「貸家建付地」という扱いになり、評価額を通常の20%下げることが可能です。

例えば、評価額3億円の土地に賃貸マンションを建設した場合、貸家建付地になり、評価額は2.4億円程度に下がります。

小規模宅地等の特例制度を確認しておく

相続税の軽減のために不動産を活用するには、建物の新築などが中心となり、相続が発生する前に行なう大規模なものが大半です。しかし、相続後に使える特例制度もあるため、知っておきましょう。

被相続人が居住用もしくは事業用として使用していた土地がある場合は、「小規模宅地等の特例」という制度が活用できます。

これは相続前の土地の利用区分に応じて、50%~最大80%評価額を下げられる制度で、例えば、被相続人が居住していた土地の評価額は、小規模宅地等の特例で80%減額されます。3億円の土地であれば、評価額は6,000万円となるでしょう。

便利な特例ですが、使えるのは土地1ヵ所のみで、面積の制限もあります。該当する土地が複数ある場合は、どの土地で特例を使うのが良いか、十分検討してください。

不動産の相続を行なううえでよくある質問

不動産の相続では、手続きを含めて多くの不安や心配などもあるでしょう。
ここでは、不動産相続でよくある質問を紹介するとともにそれにお答えしていきます。

【質問】遺言書がある場合、そのとおりに相続するしかありませんか?

いいえ、遺言書がある場合でも、各相続人に最低限保証される「遺留分」が存在します。

遺言書は、相続人以外の人に相続させたい場合や、特定の相続人にすべてを相続させたい場合など、被相続人の意向を相続に大きく反映させたい場合には有効な手段です。

しかし、相続できるはずの人がほとんどもらえない場合など、不満を抱くケースもあるでしょう。

遺産相続で遺言書があった場合でも、実は最低限相続できる権利(遺留分)が民法で定められています。遺留分の割合は、被相続人の直系尊属(父母または祖父母)のみが相続人の場合は相続財産の3分の1、それ以外は相続財産の2分の1です。

例えば、相続人が配偶者と子供2人の場合で、相続財産の合計が3億円だった場合、仮に遺言書で財産を第三者に譲ると書いてあった場合でも、2分の1の1.5億円は遺留分として相続が可能です。

遺留分内での相続人ごとの配分は、法定相続の割合により決定します。このケースの場合では、配偶者の遺留分が7,500万円、子供1人の遺留分は3,750万円となります。

【質問】売却する際に知っておきたいポイントはありますか?

はい、不動産の売却には、いくつか注意すべきポイントがあります。

不動産を売却する際には、まず相続登記を忘れずに行なってください。相続登記を行なわないと、不動産を売却することはできません。相続登記が完了したら、不動産会社や土地活用会社に不動産の査定依頼をしましょう。

売却後の代金は「譲渡益」の扱いになるので、確定申告が必要です。その際に譲渡(売却)した不動産の取得費・減価償却費が必要になります。相続した不動産の売買契約書を探しておくか、どうしても不明な場合は譲渡金額の5%程度を取得費として計上してください。

すでに相続税を支払ったあとに売却した場合は、相続税の申告期限の翌日から3年以内であれば、相続税のうち一定額を取得費として計上できます。これは「相続税の取得費加算の特例」と呼ばれるものです。

相続税分を申告時に計上することで、譲渡益を下げることができるため、税金を下げることが可能となります。

せっかく不動産を相続しても住む予定がない場合などは、放置してしまう可能性を考えなくてはならないでしょう。活用できない不動産を売却すれば、空き家問題をはじめ、相続後に負担が増える固定資産税や管理費などの回避にもつながります。

また、相続人が複数いてトラブルなく不動産を分割するのが難しい場合にも、売却した現金を分割する換価分割という方法が利用できるでしょう。

相続した不動産を売却するという手段も、場合によっては有益な相続方法と考えられます。

【質問】不動産相続後にできる相続税対策はありますか?

はい、あります。不動産の相続税対策は、相続前に行なうものが多くなっていますが、相続後でも次のような特例などは活用できるでしょう。一覧でまとめてお伝えします。

相続後に使える措置や対策 内容
配偶者の税額軽減 配偶者は相続額が1億6千万円と法定相続分相当額のいずれか多い金額まで相続税が非課税になる制度。配偶者の相続分を増やすことで、事実上非課税枠を拡大できる。
小規模宅地等の特例 前出したように、被相続人は居住もしくは事業に使っていた不動産の場合、条件を満たせば評価額が最大80%の減額になる。ただし使える土地は1ヵ所だけ。
土地評価の減額要因を探す 相続した土地に、道路計画予定地や高圧線下の土地、傾斜地、墓地の隣、騒音が激しい、などの減額要因がないかを探す。
地積規模の大きな宅地の評価 広大な宅地を相続した場合、開発により道路の建設が必要になり潰れ地が発生することから、減額の対象になる。
土地を分筆する 複数の相続人で土地を分け、分筆することで、土地の減額要因が発生し、評価が下がることがある。

【質問】法定相続人のなかに認知症の人がいる場合、手続きはどうなりますか?

自分の意志を明確にできない認知症などの人が相続人にいる場合は、遺産分割協議ができなくなります。

法定相続にしたがって相続分を分けることは可能ですが、遺産分割協議を行なう場合は、成年後見制度を活用しましょう。

これは認知症などで判断能力が十分でない方を保護する制度です。認知症になる前に後見人を指名する任意後見制度を活用していない場合は、家庭裁判所に申し立てて後見人を指名してもらう法定後見制度を利用してください。後見人が認知症の方の代理を務めることで、遺産分割協議が可能となります。

まとめ

不動産をはじめとする遺産相続の手続きは、相続人の確定から相続財産の洗い出し、遺産分割協議、相続税の算出など、膨大な作業が必要です。

このような一連の手続きを、個人が自分だけの力で進めるのは、かなりの困難がともなうと予測できます。

相続に関する一連の手続きは、あらかじめ司法書士や税理士、弁護士といった法律の専門家に依頼するのがスムーズに進めるコツといえるでしょう。

同様に、相続した不動産を売却する場合や、土地活用をしたいという場合も、経験豊富な不動産の専門家に依頼するのがおすすめです。

生和コーポレーションは、創業から土地活用一筋51年の歴史を持ち、豊富な実績とノウハウに定評のある専門企業です。相続した不動産の売却や活用方法でお悩みの場合は、ぜひ一度ご相談ください。