土地相続の手続きの流れとは?相続税を下げる方法や土地売却についても専門家が解説

土地相続の際の手続きは、誰にでも起こりうる身近な法手続きのひとつです。しかし、土地相続の具体的な流れやかかる税金、必要書類などの詳しい知識を持っている人は、実際には少ないのではないでしょうか。そこで今回は、土地相続手続きの流れをはじめ、土地相続の手続きにかかる費用や必要書類などについて解説します。

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土地の相続登記・手続きの流れ

相続によって土地を引き継ぐ際には、遺産トラブルや土地の売却などに関するトラブルなどを防ぐためにも、相続登記をしっかりと行う必要があります。

相続登記は、名義変更と呼ばれている住所変更登記のことではなく、土地の所有権移転登記になります。ここでは、所有権移転登記を意味する、相続登記の流れをはじめ、生前贈与と比較した際の特徴についてわかりやすく説明していきます。

・相続の発生

相続とは、ある人が亡くなることで発生します。この手続きでは、亡くなった人を被相続人、財産を受け継ぐ人を相続人と呼びます。

大事な家族が亡くなった場合、残された遺族は、いくつもの手続きを進めなければなりません。例えば、死亡の事実を知った日から7日以内に提出する必要のある死亡届も、相続手続きのひとつといえます。
一家の大黒柱が亡くなった場合は、土地などの不動産だけでなく、預貯金、年金などの手続きもする必要があります。
相続が発生した場合は、土地の相続登記をはじめとした各種申請手続きや、それに伴う準備なども多く、手間がかかりますが、弁護士や司法書士、税理士などの各専門家に代行依頼することもできます。

遺言書の確認や相続財産の調査、相続登記の申請などは司法書士へ依頼することができます。また、相続で発生する相続税の計算や節税対策については税理士に相談・依頼することができます。

遺産分割協議書の作成や、万が一、相続人同士でトラブルが発生した場合などには、弁護士へ依頼することができます。

スムーズに相続を進めるためにも、各種相談や手続きの代行などを、各種専門家に依頼するのも良いでしょう。

・遺言書有無の確認

遺言書とは、被相続人が生前に「誰にどの財産を分与したいか?」などの意思を記したものです。相続財産を取得できる人や各種手続きの流れなどを左右する遺言書は、遺産相続において大変重要な書面となります。

遺言書の有無を確認する方法は、遺言書の種類によって異なります。公証役場で公証人によってつくられた公正証書遺言の場合、必要書類を持って公証役場に行けば、日本公証人連合会の遺言書検索システムを使って遺言書の有無を確認してもらうことができます。

一方、自分自身が手書きで作成した自筆証書遺言などの遺言書については、被相続人の自宅や貸し金庫、お世話になっていた弁護士や司法書士といった考えられる場所のすべてを確認する必要があります。

「書かれていない・存在しない」という認識だった遺言書が後で出てきた場合には、それまで相続人同士で行っていた話し合いをもう一度やり直さなければならない可能性も出てきます。そのため、遺言書の有無は入念に調べるようにしてください。

・相続人の調査

遺言書がない場合は、まず「相続人は誰なのか?」を調査しなければなりません。また、遺言書がある場合であっても、遺言書に相続人の指定がなされていないなどの場合には、相続人の調査が必要になります。民法では誰が相続人となるのかが定められています。

被相続人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の者は、子、直系尊属(父母や祖父母など)、兄弟姉妹の順で相続人が定められています。このように民法で定められている相続人のことを、法定相続人と言います。

被相続人の遺族が妻1人・子1人のシンプルな家族構成であることが確かな場合は、すぐに法定相続人の調査は終わります。これに対して、被相続人の遺族が配偶者のみで子も親もおらず、被相続人の兄弟姉妹が既に亡くなってしまっている場合は、配偶者が被相続人の記載された戸籍謄本をさかのぼり、誰が法定相続人なのかを調査する必要があります。

また、被相続人が離婚をしている場合、被相続人の前妻(夫)との間に生まれた子にも相続権はありますので、しっかりと調査をするようにしましょう。

・相続財産の調査

被相続人の残した財産がどのぐらいあるのか把握するのも、相続手続きにおける大事な準備です。相続財産の全体像が見えなければ、相続人同士の話し合いや相続税の申告なども進められません。

また、後で相続税の申告漏れが発覚した場合、追加で納める相続税も増えるため、遺言書や法定相続人の調査と同様に、相続財産の調査も入念に行う必要があります。

相続財産には、預貯金や有価証券などのプラスの財産の他に、住宅ローンや保証債務などのマイナスの財産もありますので、どのような相続財産があるのかを正確に把握できるように調査をしましょう。

・遺産分割協議

被相続人が遺言書を残していた場合は、原則として遺言書の内容に従って遺産分割をすることになります。しかし、遺言書がない場合の遺産の分配や、土地や建物等の分割しにくい財産の分け方などについては、法定相続人の話し合いをもって遺産の分け方を決める、遺産分割協議が必要になります。

一般的な遺産分割方法としては、現物分割、代償分割、換価分割の3種類があります。

現物分割は、預貯金は妻、土地は長男、自動車は次男といった形で、個々の財産をそのまま分ける方法です。代償分割は、妻や長男などの特定の法定相続人が多くの遺産を取得する代わりに、別の相続人に対して法定相続分に相当する金額の代償金を支払う方法です。

換価分割は、土地や株式などの価値のある財産を売却して現金化し、その現金を法定相続人の間で分割する方法です。

実際の遺産分割においては、これらの3つの遺産分割方法を上手に組み合わせながら、公平な遺産分割を行っていくことが大切です。

記事の後半では、現物分割、代償分割、換価分割について詳しく紹介します。

・遺産分割協議書の作成

法定相続人の間で話し合いが済んだら、「どの財産を誰にどれだけ分けるか?」という内容を遺産分割協議書に記載します。遺産分割協議による決定事項を遺産分割協議書に記録し、明確化することで、後々の相続トラブルを起こりにくくする利点があります。

また、作成した遺産分割協議書は、遺産分割協議で決めた相続人が相続する場合の、土地の相続登記手続きや相続税申告などにも必要になります。

遺産分割協議書に、法律で決められた書式はありません。ただし相続人全員の署名と実印の押印が必要となりますので、記入ミスなどが起こらないように慎重に作成作業を進めてください。

・相続登記の申請

遺産分割協議書が完成したら、ようやく管轄の法務局で土地の相続登記ができるようになります。この手続きの詳細については、後述します。

相続した土地はどう分割する?

相続人が複数いる場合、通常遺産は分割相続によって相続されます。分割相続とは、被相続人の遺産を何らかの形で分け、各相続人に分配する相続方法です。

遺産を分割相続するうえで、具体的な分割方法として一般に利用されるのが、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の4種類です。では、それぞれの具体的な分配方法と特徴を見ていきましょう。

現物分割

現物分割では、遺産をそのままの状態で複数の相続人に分配します。例えば、妻には自宅の土地と建物を、長男には投資用マンションを、娘には預貯金と駐車場を、などといった分配方法です。遺産の現金化や土地の分筆(一つの土地を複数に分けること)が必要ないため、手続きの手間が少ないという特徴があります。

一方、相続する財産は時価総額に差があることも多いため、相続人間で不満が出やすい分割方法でもあります。

代償分割

現物分割では、遺産を各相続人に分配した際に時価総額に偏りが出ることが珍しくありません。現物分割ではトラブルに発展する可能性が高いなら、遺産を多く取得した人が他の相続人にお金を払うことで調整することもできます。この分割方法を代償分割といいます。

代償分割のメリットは、土地や建物など分割の難しい財産を公平に分けられる点です。土地に思い入れがあり売却が難しい場合も利用できます。

一方で、代わりに支払う現金がない状態だと、代償分割を採用するのは難しいでしょう。また、遺産分割協議後も代償金の支払いがなく、トラブルになるケースも散見されます。

換価分割

換価分割は、遺産をすべて換金し、得た金額を相続人で分配する分割方法です。土地の相続を相続人全員が拒否した場合や、代償金を用意できる人がいない場合に候補となります。

換価分割では遺産をすべて現金化するため、相続分に差が出にくい点がメリットです。一方、土地の売却では不動産業者に支払う仲介手数料が発生し、利益が出たときは譲渡所得税の支払いも必要です。

また、土地の査定から売却までは相応の手間がかかるため、誰が手続きを行うのかという点でトラブルになる可能性もあります。

共有分割

共有分割は、土地を相続人全員の共有名義のまま相続する分割方法です。一見公平で無難な分け方に見えますが、デメリットはあります。

まず、共有名義の財産は名義人1人の独断では売却できません。また、名義人の1人が自分の持分(名義人1人分の所有権)を売却してしまえば、土地の権利者として他人が介在することになります。

共有名義の土地は処分しにくく、権利関係も複雑になるため、基本的に共有分割は最後の手段です。可能な限り他の分割方法を模索するのが良いでしょう。

相続と生前贈与を比べた場合の土地相続のメリット

土地を引き継ぐ方法としては、生前贈与をする方法と相続をする方法がありますが、被相続人の土地を生前贈与ではなく、相続をした場合には、生前贈与に比べて基礎控除額が大きい、相続人に対して不動産取得税が課税されない、配偶者が相続する場合は相続税の税額軽減(配偶者控除)が受けられる、という3つのメリットが得られます。

・相続税は原則、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除が受けられる
土地相続の最大の利点は、次の計算式で算出された基礎控除が受けられることです。

相続税の基礎控除額 = 3,000万円+600万円×法定相続人の数
被相続人の残した正味の遺産額が基礎控除額を下まわった場合、相続税はかかりません。基礎控除より多い場合は、超えた分に課税される仕組みです。

例えば、法定相続人が妻と子3人だった場合、基礎控除額は次のような計算式で5,400万円であると算出されます。

3,000万円+600万円×4人=5,400万円

この場合、被相続人の残した遺産の合計額が5,400万円以下の場合は、相続税はかかりません。まずは基礎控除枠に収まるか、おおよその金額を把握しておくとよいでしょう。

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土地にかかる相続税を下げる方法

土地を相続した場合、忘れてはいけないのが相続税です。相続する土地の評価額が高いと、その分支払う相続税も高額になります。

しかし、相続税には税額の支払いを軽減できる制度がいくつか用意されていますので、効果的に活用していきましょう。ここでは、軽減制度のなかでも代表的な小規模宅地の特例と相続税の配偶者控除を紹介します。

「小規模宅地の特例」を使う

小規模宅地の特例は、被相続人が所有していた土地の相続税額を軽減する制度です。相続税を計算する際、相続税評価額を減額できます。特例の対象となる土地は6種類存在し、それぞれ面積の上限と、相続税評価額の減額割合が異なります。

特例が利用できる6種類の土地のなかで、一般的な相続で対象となりやすいのは、特定居住用宅地等、特定事業用宅地等、貸付事業用宅地等の3種類です。

・特定居住用宅地等
特定居住用宅地等とは、被相続人が所有していた宅地のうち、居住用に利用していた土地を指します。特例を利用するには、被相続人の配偶者か同居の親族の相続・遺贈による取得が必要です。なお、配偶者も同居の親族もいない場合は、過去3年間借家暮らしをしていた親族による取得でも特例を利用できます。

特定居住用宅地等の相続では、軽減できる土地の上限面積は330平方メートル、税額の軽減割合は80%です。

・特定事業用宅地等
被相続人が所有していた宅地のうち、被相続人が個人名義で事業に使っていたものは、特定事業用宅地に該当することがあります。特定事業用宅地として特例を利用するには、親族が被相続人の事業を引き継ぎ、相続税の申告期限まで対象の宅地を利用して事業を営んでいることが必要です。

特定事業用宅地として特例を利用する場合、面積の上限は400平方メートル、相続税評価額の減額割合は80%です。

・貸付事業用宅地等
貸付事業用宅地等とは、被相続人の貸付事業に相続開始の直前まで利用されていた宅地のことです。事業の業種としては、アパートやマンションなどの賃貸物件の経営、駐車場経営、駐輪場経営などが挙げられます。特例を利用するには、被相続人の事業を親族が相続税の申告期限までに引き継ぎ、継続していることが必要です。

貸付事業用宅地等として特例を利用する場合、限度面積は200平方メートル、相続税評価額の減額割合は50%です。

相続税の「配偶者控除」を使う

被相続人の財産のうち、配偶者の相続分については配偶者控除を利用できます。配偶者控除を利用すると、相続分のうち「1億6,000万円まで」または「配偶者の法定相続分を超えない範囲」で、金額の大きいほうを上限として相続税が非課税になります。

例えば、相続税評価額4億円の土地を、妻・長男・長女の3人で分けると仮定します。法定相続分で分割すると、妻が相続するのは2億円分です。この場合、妻の取り分は法定相続分を超過していないため、1億6,000万円より多いですが全額非課税となります。なお、配偶者控除の利用には、相続税の申告書と配偶者の取得財産がわかる書類(遺言書の写しや遺産分割協議書の写しなど)の提出が必要です。

相続税の申告後に遺産分割が発生して控除を利用したい場合は、遺産分割の成立から4か月以内に、税務署長に対し税額の再計算と軽減を求める、「更正の請求」の手続きが必要です。

相続した土地を売却するときの手順

分けるのが難しい土地を、相続人の間で不公平なく分割したいのであれば、売却して現金化する換価分割が最も適しています。では、相続した土地を売却した場合、どのように手続きを進めれば良いのでしょうか。土地の相続から現金化までの流れを見てみましょう。

1.相続登記で名義換えをする

まず、売却の前準備として、土地の名義を被相続人から相続人に変更します。土地が死亡名義のままだと売却できないためです。

売却が前提の相続登記では、相続人のうち誰か一名を代表者に選び、一時的に代表者の名義に切り換えるのが一般的です。土地を相続人全員の共有名義にしても売却は可能ですが、途中で名義人の1人が心変わりして売却を拒否すると、土地を売れなくなってしまうため注意してください。

なお、土地の名義が被相続人ではなく、祖父や曽祖父など数代前の所有者のままになっているケースもあります。この場合は相続人が十名以上いることもあり、遺産分割が煩雑になることも考えられます。土地の相続が発生する可能性があれば、一度被相続人が存命のうちに名義を確認しておくのが良いでしょう。

2.不動産会社へ相談・査定依頼する

土地の権利関係を整理したあと、具体的な売却の準備に入ります。まずは、不動産の売買を仲介している会社に相談し、土地の査定依頼を行います。

土地の査定は、複数の不動産会社に依頼し、査定価格を比較するのがおすすめです。不動産は会社によって査定結果に差が出ることも多く、一社のみの査定では正確な価格を知ることは難しいからです。

土地の査定方法は、書類上のおおまかな情報だけで査定を行う机上査定と、実際に不動産会社の担当者が現地を訪問して金額を算出する訪問査定の二種類が存在します。

机上査定は訪問査定と比較して正確性には劣りますが、一括査定サイトを利用して手間なく結果を知ることが可能です。最終的には訪問査定を受ける必要はありますが、おおよその価格を知りたいときや、訪問査定を依頼する業者の絞り込みに利用できます。

3.所有権移転登記をする

無事に買い主が見つかり、売買契約の締結が完了したら、法務局で所有権移転登記を行います。所有権移転登記は、売り主と買い主が共同で行うとされていますが、売買では司法書士に依頼して代行してもらうのが一般的です。

所有権移転の際、売り主側で用意する書類は以下のとおりです。

・不動産売買契約書
・登記識別情報(または登記済権利証)
・印鑑証明書
・固定資産評価証明書
・司法書士への委任状

土地の登記には必要書類が多いです。役所の開庁時間の関係上、平日しか取得できない書類もあるため、早めに準備を始めましょう。売買の仲介を依頼する不動産会社を決定した頃から徐々に準備を進めておくと、手続きが必要になった際に慌てずに済みます。

4.売却金を受け取る

売買と土地の引き渡しが完了し、代金の受け取りが確認できれば売却は完了です。このあと、遺産の相続割合に応じて各相続人に代金を分配します。

なお、土地の売却によって利益が発生した場合、利益は所得となるため、所得税と住民税が課税されます。ただ、不動産の取得費(被相続人が土地を取得した際の費用など)や、売買のための経費などを整理して清算した結果、利益が出ていないことも多いです。土地の売却で利益が出なければ非課税になるので税金を払う必要はありません。

税金が発生するかどうか相続人だけでは判断できないのであれば、土地を売却前に税理士や税務署に相談してみましょう。

土地相続の手続きは計画的に

土地の相続は、所有権の移転や土地の売却など、煩雑な手続きが付随します。土地の相続が発生する可能性があれば、どのように分けるのが良いか、必要な手続きは何かなどをあらかじめ整理し、計画を立てるようにしましょう。

どこから手をつけるべきかわからない方は、司法書士や税理士など専門家の助けを借りるのも良い方法です。