土地活用としての「保育園経営」とは?始め方やメリット・デメリットを解説

土地活用をしたい場合、アパートやマンションなどの賃貸経営をイメージすることが多いのではないでしょうか。賃貸経営は土地活用として有効ですが、近年では「待機児童問題」による保育園需要の高まりを受け、土地活用手段として保育園の委託運営を検討する方が増えています。

保育園の委託運営は、空室に左右されず、長期的な安定収入が期待できる土地活用です。ただし、認可保育園の場合は認可が下りるまでに時間がかかったり、近隣との騒音トラブルなどが起こったりする可能性があるため、リスクを理解したうえで慎重に判断する必要があるでしょう。

本記事では、土地活用で保育園の経営が有効である理由や、メリット・デメリット・注意点を解説します。具体的な運営方法にも触れているため、ぜひ参考にしてください。

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待機児童問題から保育園需要は高まっている!

出産・育児休暇を経て職場復帰したい子育て中の親が、子どもを保育園に預けられずに退職せざるを得ない事態を招く「待機児童問題」について、早急な改善を図るべく、国や地方公共団体による施策が行なわれるようになりました。

厚生労働省が公表した「保育所等関連状況取りまとめ(令和3年4月1日)」によると、保育所の定員充足率(利用児童数÷定員)は90.9%です。

待機児童数は年々減少傾向にあるものの、全国でまだ5,000人を超える児童が保育園に入れない状況が続いています。

特に低年齢児(0歳~2歳の子ども)の待機数は、全体の87.6%と大半を占めており、保育園の供給が追いついていません。今後も保育園の需要は継続して高まっていくといえるでしょう。

土地活用で保育園を運営したいと考えるなら、運営ノウハウを持った保育園運営会社に委託するのがおすすめです。具体的な委託運営方法について、詳しくは後述します。

保育園運営の3つのメリット

保育園運営には次のようなメリットがあります。

・長期的な安定収入が期待できる
・補助金が受け取れる
・税金が減免される

待機児童問題が長期化していることもあり、保育園への補助金や税金減免などの公的施策を実施する自治体が増加傾向にあります。有効な土地活用をするために、保育園運営のメリットを確認しましょう。

長期的な安定収入が期待できる

待機児童に対する保育園の数は十分ではなく、継続した需要があるため、長期的な安定収入が期待できます。

保育園を運営する手段には「事業用定期借地式」や「リースバック式」と呼ばれる、委託業者へ土地や建物を貸し出す方法があります。土地や建物を貸し出せば、収入は大きく増減することなく、安定して得られるでしょう。

将来を見据えて、老後の生活資金確保を目的に保育園の経営を始める方もいます。

補助金が受け取れる

保育園を建設する場合、国や自治体から補助金を受け取れる可能性があります。補助金を活用することで、初期投資の負担額を減らせるでしょう。

例えば「保育所等整備交付金」は、認可保育園を新設・修理・改造・整備する法人が対象となる補助金で、工事費や工事請負費、工事事務費などの一部補助が受けられる仕組みです。

また、認可外保育園に補助を行なう自治体もあります。例えば東京都は、保育所等整備交付金の対象外である株式会社やNPO法人に対しても、独自に整備費補助を行なっています。

このように、保育園の建設により補助金の対象となる場合があるため、保有する土地がある自治体の補助金制度を確認しておきましょう。

税金が減免される

土地を貸し出した場合、固定資産税や都市計画税が減免になる地域があります。

例えば東京23区では、2023(令和5)年3月31日までに条件を満たせば、保育園新設後の新たな課税年度から最長5年度分、固定資産税・都市計画税が全額減免となる措置を講じています。土地保有における税金が減免されることは、土地活用の大きなメリットでしょう。

ただし、賃料なしでの貸し出しは対象外です。

保育園運営の3つのデメリット

保育園運営には次のようなデメリットがあります。

・開園まで時間がかかる
・騒音・感染症などのトラブルが起こるリスクがある
・業者選定を誤ると経営が不安定になる恐れがある

長期的な運営や安定した収入を得るために、デメリットも把握しておきましょう。

開園まで時間がかかる

認可保育園は設置基準が厳しく、国や自治体による認可までの審査期間は最低でも1年半とされています。また、建設前には近隣住民から理解を得るために説明会を開く場合もあり、開園までは年単位の時間がかかるでしょう。

早期に土地活用したい場合は、認可保育園の運営は向かない可能性があるため、認可外保育園への変更なども視野に入れておくとよいでしょう。

騒音・感染症などのトラブルが起こるリスクがある

保育園は幼い子どもを預かるため、近隣住民との騒音トラブルが発生しやすい場所です。全国各地の保育園で騒音トラブルが発生しており、なかには訴訟問題に発展したケースもあります。

また、園児のケガや病気(インフルエンザ・ノロウイルスなど)の集団感染のリスクもあるでしょう。

そのため、保育園運営に取り組む場合は、騒音トラブルやケガ・病気に備え、スムーズに対処できる体制を事前に整えておくことが重要です。運営会社のトラブルへの対応次第では、休園や廃園につながる恐れがあるため、適切なトラブル対処を行なえる業者を慎重に選定しなければなりません。

業者選定を誤ると経営が不安定になる恐れがある

安定した保育園運営をするには、委託する業者の選定が重要です。経験やノウハウがない業者を選んでしまうと、さまざまなトラブルが起こるリスクが高まるためです。

具体的には、保育士不足や教育不足による「保育の質の低下」や、保護者やクレームへの不適切な対応による「信頼の低下」などが挙げられます。結果として、選ばれない保育園となり、廃園に追い込まれるケースは少なくありません。

業者選定の際は、働く従業員や建物の雰囲気、評判を確認するため、委託業者が運営する保育園の見学をおすすめします。適切な経営が可能な業者なのか判断するには、委託業者の財務諸表を確認するとよいでしょう。

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保育園を委託運営する場合の経営方法は2つ!

保育園を委託運営する場合は、次のような経営方法があります。

・事業用定期借地式
・リースバック式

ここからは、委託運営する場合の2種類の方法について、それぞれ解説します。

事業用定期借地式

事業用定期借地式とは、借地権の一つである「事業用定期借地権」の制度を利用し、土地のみを委託業者へ貸し出す方法です。保育園の建設から運営まで、すべて委託業者に任せられ、コストや手間をかけずに土地活用できる点がメリットです。

ただし、地代以外の収入がないため、収益性はあまり高くありません。もともと保有する土地を有効活用したい場合などに向いています。

リースバック式

リースバック式は、保育園を運営する事業者から受け取る「建設協力金」を活用し、土地のオーナー様が保育園を建設したうえで、土地と建物を運営事業者に貸し出す方法です。

建設協力金は返済が必要ですが、国や自治体から補助金が受けられることもあるため、返済はそれほど難しくありません。初期投資の負担を抑えられることから、自己資金が少なくても参入しやすい点が特徴です。

また、土地・建物両方の賃料が受け取れるため、事業用定期借地式よりも安定した収入が期待できます。

保育園の土地活用を始める際に知っておきたいポイント

保育園の土地活用を始めるうえで、事前に知っておきたい情報は次のとおりです。

・保育園は3種類ある(認可保育園、認可外保育園、認証保育園)
・認可保育園の設置基準

一口に保育園運営といっても、保育園にはさまざまな種類が存在します。認可や認証を受ける場合には設置基準が細かく設けられているため、保有する土地を有効に活用できるよう確認しておきましょう。

保育園には3種類ある(認可保育園、認可外保育園、認証保育園)

ここからは、認可保育園・認可外保育園・認証保育園の特徴を解説します。

認可保育園

認可保育園とは、厚生労働省管轄の児童福祉施設であり、児童福祉法における「保育所」のことを指します。

認可保育園にも種類があり、各市区町村が運営する「公営保育所」と、社会福祉法人やNPO法人などの民間事業者が運営する「私立保育所」の2つに分けられます。

認可保育園を開設するには、国が定めた設置基準を満たしたうえで、都道府県知事に認可される必要があるため、簡単ではありません。その分、認可された場合の補助金などの優遇措置は大きい側面があります。

設置基準について、詳しくは「認可保育園の設置基準」の章で解説します。

認可外保育園

認可外保育園は、国が定めた設置基準を満たしていない保育園全般のことで、認可外保育施設や無認可保育園とも呼ばれます。

設置基準では、施設の面積についても定められており、都心部などの地価が高いエリアでは、物理的に必要面積を確保できず認可が受けられないケースが多くあります。

反面、認可外保育園は基準がゆるやかなため、独自サービスの展開が可能です。例えば、土日も仕事がある方向けに、早朝や夜間、休日、祝日でも子どもを預かる体制にするなど、多様化するニーズに合わせたサービスを提供しやすいでしょう。

認証保育園

認証保育園は「認可外保育園」の一つです。東京都独自の制度であり、東京都が認証した保育施設のことを指します。厚生労働省では「地方公共団体における単独保育施策(地方単独保育事業)」と呼ばれており、東京都を中心に各都道府県でも認証制度が普及しつつあります。

認証保育園と認められると運営費の補助が受けられるため、認可が受けられない保育園にとって、有効な運営手段といえるでしょう。

認証保育園は、国の設置基準ではカバーできない保護者のさまざまなニーズに応える、新しい制度の保育所としての役割があります。

認可保育園の設置基準

認可保育園の設置基準は、以下の表のように「職員配置基準・職員資格・保育室等の広さ・給食」などの項目が定められています。

入所対象 0歳~1歳児 2歳児以上
定員 60人以上 60人以上
職員配置基準 0歳児:3人につき1人以上 1歳児:6人につき1人以上 2歳児:6人につき1人以上 3歳児:20人につき1人以上 4歳以上児:30人につき1人以上
職員資格 保育士 保育士
保育室等の広さ (1人当たり) ほふく室:3.3平方メートル 乳児室:1.65平方メートル 保育室等:1.98平方メートル 屋外遊戯場:3.3平方メートル(保育所外の公園等を含む)
給食 自園調理または委託 自園調理または委託

なお、保育士不足により、2016(平成28)年4月から、以下のような保育士配置の特例が実施されています。

<特例措置>

1 朝夕など児童が少数となる時間帯における保育士配置に係る特例 保育士最低2人配置要件について、朝夕など児童が少数となる時間帯においては、保育士2名のうち1名は子育て支援員研修を修了した者等に代替可能とする。
2 幼稚園教諭及び小学校教諭等の活用に係る特例 保育士と近接する職種である幼稚園教諭、小学校教諭、養護教諭を、保育士に代えて活用可能とする。
3 保育所等における保育の実施に当たり必要となる保育士配置に係る特例 保育所等を8時間を超えて開所していることなどにより、認可の際に最低基準上必要となる保育士数(例えば15名)を上回って必要となる保育士数(例えば15名に追加する3名)について、子育て支援員研修を修了した者等に代替可能とする。

(引用:厚生労働省「保育所における保育士配置の特例(平成28年4月施行)の実施状況調査について(平成28年10月1日)」/ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000146658.html

都道府県・政令都市・中核市の場合、条例に厳しい基準が追加されたり、運用が細かく規定されたりするケースがあります。認可の手続き方法は、都道府県や市町村によって異なるため、各都道府県の管轄部署へ問い合わせをして確認しましょう。

まとめ

待機児童問題により、保育園の需要が年々高まっており、改善への取り組みとして、保育施設の建設・増設に対しての公的補助が整備されつつあります。

保育園の委託運営は、一時的に初期費用がかかるものの安定収入が期待できるため、土地活用として有効な手段といえるでしょう。

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