土地活用における利回りの基本的な考え方や注意したいポイントを解説

利用していない土地を有効活用しようと思っても、「不動産経営の経験がないためどうしたら良いかわからず、そのままにしてある」という話をしばしば聞くことがあります。

たしかに不動産経営は、知識を何も持たずに行なえるほど簡単ではありません。しかし、専門家でなければ、必ず損してしまうというのも誤りです。しっかりとした知識を身に付ければ、誰でも不動産経営で成功するチャンスがあります。

不動産経営を成功させるために欠かせない知識の一つが、「利回り」です。利回りとは、初期費用などの投資額に対して年間どれほどの収益が得られるかを表す数値です。

今回は、土地活用の利回りと利益の基本的な考え方や算出方法を、土地活用の事例と合わせて解説します。

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失敗しない土地活用と利益の考え方

所有する土地を有効に活用し利益を生むためには、その土地にあった活用方法を選択することが大切です。

例えば、駅から遠く離れている場所で賃貸マンションを経営しようとする場合、通常は家賃が安く、入居率が悪くなるために成功するかは見通しがつきません。

しかし、散歩に適した大きな公園が周辺にあったり、学校や医療機関、ショッピングセンターなどの施設が充実していたりすると、住環境の良さから賃貸マンション経営に適した場所となります。

土地活用には、マンション経営以外にもさまざまな方法があります。月極やコインパーキングなどの駐車場、トランクルームや倉庫などの物流施設の経営、コンビニやスーパーなどの商業施設をテナントとするビル経営、クリニックや整骨院、老人ホームやデイサービスなどの医療系・介護系施設への不動産経営など土地活用法は多種多様です。

失敗しない土地活用を行なうためには、数多くの選択肢のなかから、「所有している土地に適しているものが何か」を見極めることが大切です。そのうえで、それらのビジネスモデルがどれくらいの利益を生むのかを冷静にシミュレーションし、比較検討して土地の活用法を決めましょう。

土地活用の利回りとは

所有している土地の活用方法を考えるうえで、明確な根拠に基づくことなく、勘やイメージで決めてしまうのは危険です。最低でも、それぞれの活用方法によって得られる利益がどうなるかを、きちんとシミュレーションしておくことが必要です。

その際に役立つのが、利回りという考え方です。利回りには表面利回りと実質利回りがあり、計算方法が異なります。アパートやマンション経営を例にみていきましょう。

アパートやマンション経営をする場合の計算(表面利回り)

表面利回り(%)=(年間収入÷物件価格)×100

表面利回りは諸経費などを考慮しないため、素早く簡単に利回りをつかめます。例えば、計画の初期段階で、いくつかの活用法を比較・シミュレーションするときには、計算が簡単にできるため役立ちます。

しかし、計画が進んだ段階ではより綿密な計算が必要なため、その際には実質利回りがよく使われます。

アパートやマンション経営をする場合の計算(実質利回り)

実質利回り(%)={(年間収入-諸経費)÷(物件価格+初期の諸経費)}×100

実質利回りでは諸経費などを考慮するため、土地活用後の実際に運用した場合に近い利回りを把握できます。

最終的に土地活用の方法を決断する際には、空室による収入減、リフォームやリノベーション費、修繕費など将来必要と思われる費用をすべて盛り込みます。できるだけ実態に即した細かな条件を設定し、実質利回りを計算することをおすすめします。

実際にアパートやマンション経営を始めて安定した収入を得るためにも厳しい条件を設定し、最低限必要な利回りを確保できるようにしておきたいものです。

アパート経営の利回り計算方法とは?最低ラインや利回り相場を解説

土地活用における利回りの想定期間と見直しのタイミング

利回りは土地活用の計画段階はもちろん、オーナーとして経営を続けるうえで、常に意識しておきたい数値です。計画段階で想定できる利回りはあくまで予測であることから、定期的に利回りを算出し見直していく必要があります。

計画段階での利回りは5~10年を目安に想定

土地活用を計画する際、長期的に安定した収益が上げられる利回りを考えましょう。しかし数十年と続くであろう土地活用は、建物の経年劣化などによって家賃設定の見直しをしなければいけないため、将来にわたって同じ条件が続くことはありません。利回りは計画的に考えるべきものですが、正確に予測することは困難です。

計画段階での利回りが続くのは5~10年が目安と考え、それ以降はあくまでも想定値ととらえましょう。また、利回りの変化を見逃さないためにも、土地活用を始めたら1年ごとに想定利回りと実際の利回りで、どれだけのずれがあったのかを把握しておくことも必要です。

10年目以降は修繕費や入居率低下も視野に

土地活用では、建物の劣化や周囲の環境の変化があることから、経過年数とともに利回りが当初の想定とずれが生じるケースが増えるのは仕方ありません。大切なのは、利回りを下げる要因でもある、修繕費や空室のリスクなどを考えて計画を立てることです。

例えば賃貸のアパートやマンションの場合、一般的に11~18年目のあいだで屋根や外壁の塗装といった大きな修繕や、給湯器やエアコンなど設備の交換が必要になるといわれています。10年目以降に大きくなる修繕費や管理費の負担は、当然ながら利回りにも影響を与えるでしょう。

建物の劣化によるリスクが低い駐車場経営でも、周囲の開発により街の様相が変わり、想定したニーズと合わなくなって駐車場の利用台数が減ることも考えられます。

計画段階では想定できる範囲でリスクも踏まえた利回りを算出し、経営開始後は数年単位で事業として利回りに問題がないかを見直すことが、土地活用の成功には欠かせません。

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土地活用別の利回りの目安

計画段階での利回りの想定は必要ですが、同時に経営するなかで見直しも欠かせないことがわかったところで、実際に土地活用法別の利回りを算出してみましょう。

ここでは土地活用法として検討されることの多い、アパート・マンション経営、テナント経営、駐車場経営の3つを紹介します。

なお、今回は土地をすでに所有しているものとして算出しています。オーナー様は土地代の支出がない分、低いリスクで利回りの高い土地活用が可能です。

アパート・マンション経営

土地活用のなかでもよく知られているのが、アパートやマンションの経営です。アパート・マンション経営の場合は、表面利回りが5~9%、実質利回りは3~6%程度が目安といわれています。

所有地が家賃相場の高いエリアにある場合は、さらに高い利回りが期待できます。一方で、家賃相場が低いエリアや利便性に欠ける場所では空室リスクがつきまとい、利回りが下がることもあるでしょう。

一例として、総事業費3億2,000万円(うち諸経費3,200万円)、1LDK×24戸のマンション経営を始めた場合を紹介します。

家賃11万円で95%の入居率であれば、年間3,009万6,000円の収入が得られると考えられます。そのうち、ローン返済や税金などの年間経費が1,200万円とすると、手元に残るのは1,809万6,000円です。

この場合の表面利回りは10.45%、実質利回りは5.6%となります。目安となる利回りと比較しても高い水準であることから、この所有地におけるマンション経営は土地活用法として適したものといえるでしょう。

テナント経営

コンビニや飲食店、美容院などの商業テナントとして貸し出す方法も土地活用の一つです。テナント経営の場合はターゲットとする事業の種類や、どのような土地で展開するかで利回りが大きく変わります。

コンビニなどの商業テナントは賃料単価を高く設定できるケースが多いため、高い利回りを期待できるでしょう。一方、コインランドリーや飲食店、美容室などは賃料が安くなり、利回りが低くなる傾向にあります。

アパートやマンションとしてのニーズは低くても、テナント経営には向いている立地も存在します。例えば、主要道路のロードサイドで、ある程度規模のある土地であれば、車での来客が多い商業テナントを建設することで高い利回りが見込めるでしょう。

このようにテナント経営では、活用法次第で実質利回りが10%以上確保できることもあります。ただし、1件当たりの賃料が高い分、撤退時や空室時のリスクが高くなるケースがあることも知っておきましょう。

駐車場経営

月極駐車場やコインパーキングなどの駐車場経営は、初期費用が抑えられる土地活用法として知られています。

月極駐車場の場合は、一般的に表面利回り・実質利回りがともに4%前後であることが目安といわれています。ただし、所有地が駅や商業施設の近く、駐車場がない集合住宅が多い場所など、好条件の場合は実質利回りが50%を超えることもあります。

高い利回りの理由は、立地以外に初期費用の低さが挙げられるでしょう。駐車場経営にかかる費用は土地の造成代と、コインパーキングの場合の機械導入費用くらいです。そのため、建物を建設する土地活用法に比べると初期費用が抑えられます。

例えば、1台2万円の賃料で32台分のスペースを有する月極駐車場を経営した場合を見ていきましょう。

この駐車場の契約率を90%とすると、年間691万2,000円の収入となります。初期費用として土地の造成で800万円 、税金や管理費で年間280万円の支出があると仮定すると、実質利回りは51%です。

このように駐車場経営では、駐車可能台数や契約台数などの立地条件が利回りに大きく影響します。所有地が駐車場として需要があり、高い賃料が設定できるエリアなのか、月極とコインパーキングのどちらが向いているのかの見極めが必要です。

利回りを考えるうえでの注意点

利回りは、オーナー様にとって土地の活用法を決める際の判断材料の一つとなります。しかし算出した利回りの数値だけでは、土地活用の良し悪しは測れないことも知っておきましょう。

例えば計画段階で高い利回りが見込めても、見積もりが甘い場合やそもそも土地に合わない土地活用法を選んだ場合は、想定した利回りを実現できずに終わってしまいます。

利回りを見る際は、計算方法や基本的な考え方を理解して、どのように利回りが導かれたのかを知っておくことが重要です。

オーナーとして利回りの仕組みを理解しておく

土地活用を始めようと建設会社に見積もりを依頼すれば、多くの会社が経営プランを掲示してくれるでしょう。

しかし、オーナーとして利回りを算出した根拠を理解せずに、明示された数字だけで判断するのは大変危険です。会社によっては提案プランの利回りの算出が表面利回りであるケースや、実質利回りだとしても初期費用や年間経費の見積りが甘いこともありえます。

オーナー様ご自身でも利回りの基本的な考え方を理解したうえで、実現可能な利回りを算出し土地活用を一緒に考えてくれる業者を選びましょう。

土地活用の利回りは立地に大きく左右される

土地活用は、ローリスクハイリターンもしくはハイリスクローリターンといわれています。どちらになるかを決める大きな要因は、土地の立地です。

そもそもオーナー様には、土地の購入費用を避けられるという大きな強みがあります。所有地が家賃相場の高いエリアであれば、土地代なしに高い利回り、つまりローリスクハイリターンで土地活用を行なえるでしょう。

一方で、土地代が必要ないからといって、建設会社の勧めるままに需要を見極めずにアパートやマンションを建設してしまう方もいます。その場合、初期費用に対して低めの賃料しか設定できず、結果として低い利回りとなる可能性があることを知っておきましょう。

肝心なのは土地に合った利回りを想定し、安定した経営が行なえる土地活用法を選ぶことです。

利回りの高さだけで判断しない

ここまで利回りについて知ることで、より高い利回りで土地活用をしたいと考えたオーナー様もいることでしょう。しかし、利回りが高いからといって、それが最適な土地活用法とは限りません。

利回りの高さには何かしらのリスクが隠されていることもあるため、注意が必要です。例えば、賃貸経営で初期費用を抑えると、高い利回りが実現できることがありますが、設備や建物のグレードが落ちれば、周囲の物件より入居率が下がる可能性があります。

想定した利回りが高くても、安定した収入が得られなければ本末転倒です。そのため、オーナー様には利回りが高い理由はどこにあるのかを知り、判断することが求められます。

利回りは空室率も考慮して計算する

アパートやマンションといった賃貸経営の利回りには、空室を埋められるかどうかが大きく影響します。

賃貸経営において目指すべきは空室ゼロですが、常に100%の入居率を維持するのは現実的ではありません。引っ越しのタイミングや修繕の時期によっては、空室がやむをえないこともあるでしょう。

実際に経営プランを決める際には、空室率も踏まえた利回りを見て判断しましょう。首都圏や関西圏での入居率の目安は95%程度といわれています。高い入居率を維持するために、将来的にリフォームや家賃の値下げが必要になることも考慮しておきましょう。

空室を埋められるか不安というオーナー様は、不動産管理会社と「一括借上げ(サブリース)契約」を結ぶ方法もあります。

一括借上げ(サブリース)とは、アパートやマンションの賃貸物件を丸ごと管理会社が借り上げ、空室状況に関わらず一定の収入を保証する制度です。

管理会社によっては、一括借り上げによる家賃の支払いだけではなく、建物の無料点検や入居者からの問い合わせやトラブル対応まで引き受けてくれる会社も存在します。

まとめ

所有する土地をどのように活用するのかを判断し、経営がうまくいっているのかを見極めるためにも、オーナー様にとって「利回り」は欠かせない知識です。

利回りの高い土地活用法が一見良さそうには思えますが、利回りの高さには必ず要因があることを忘れてはいけません。土地の条件が良い結果、利回りが高い分には問題ありませんが、初期費用を通常より抑えていたり、管理費や空室リスクを甘く見積もっていたりする可能性もあります。

ご自身の所有する土地がどのような活用法でどれだけの利回りになるのか、具体的に知りたい方は、生和コーポレーションにお問い合わせください。