賃貸マンション経営・アパート経営に必要な初期費用とは?内訳や相場を解説

マンション・アパート経営に必要な初期費用には、どのようなものがあるのでしょうか。

マンション・アパート経営を始めるには、新たに建物を建築する方法と、すでに建築済みの物件を購入する方法があります。それぞれどのような費用が必要になるのか解説するので、賃貸経営をお考えのオーナー様はぜひ参考にしてください。

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マンション・アパート経営にかかる費用とは?

マンション・アパート経営にかかる費用は、大きく初期費用と維持費用に分けられます。どのような費用がどの段階でどの程度かかるかを把握しておくと、経営計画をスムーズに立てられるでしょう。

初期費用は、更地に新たな建物を建てるか、すでに建築されている物件を購入するかによって、内訳が異なるものです。この記事では、物件の取得から賃貸経営を始めるまでにかかる費用を初期費用として解説しています。

なお、建物の建築や物件購入の費用は高額になりますが、融資が利用可能です。そのため、経営を始めるにあたり、初期費用の全額を自己資金で用意する必要はありません。

実際に必要な自己資金額は経営規模によって異なりますが、初期費用総額の15~30%程度が目安となります。

更地に新たに建物を建築する場合の初期費用

すでに所有している更地にマンション・アパートを建築する場合には、以下3つの初期費用がかかります。

1.建物の工事費
2.付帯設備費
3.建築にともなう手続き費用

新規にマンション・アパートを建てるメリットは、土地を有効活用できることです。また、建築段階からオーナー様が関与できるため、自身の理想を組み込んだ建物にできます。

建物の工事費

新たに建物を建築する際にまず考えなくてはならないのが、建物本体の工事費です。建物の工事費は、建物の規模や構造、工法によって大きく変わります。

マンションの場合は、建物規模が大きく頑丈なRC造(鉄筋コンクリート造)や重量鉄骨造がおもに採用されるため、建物の工事費は高額になるでしょう。

それに対し、アパートの場合はマンションよりも規模が小さく、おもに木造や軽量鉄骨造が採用されるため、工事費は安くなります。規格化された材料で組み上げていく木造のツーバイフォーや、あらかじめ工場で作った部材を現場で組み立てる鉄骨のプレハブ工法など、コストを抑えた工法の選択も可能です。

また、マンション・アパートの建築には建築基準法や都市計画法などの法律が関係しているため、各法律に沿って建築しなければなりません。例えば、建築基準法第61条では、防火地域に建築する場合、耐火建築物でなければならないと定められています。その基準を満たすために、建築コストが上がることもあるでしょう。

建物の工事費の目安は「坪単価×延べ床面積」で求められます。構造別の費用相場は以下のとおりです。

・ 木造:50万円~70万円程度/坪
・ 軽量鉄骨造:60万円~90万円程度/坪
・ 重量鉄骨造:80万円~110万円程度/坪
・ RC造(鉄筋コンクリート造):80万円~120万円程度/坪

ただし、上記の費用相場は見積もりを坪数で割った数字のため、あくまでも目安となります。近年はインフレや円安などの影響もあり、この限りではありません。

さらに、部屋の造作工事やシャワートイレ、インターネット回線、カメラ付きインターフォンなど各部屋の設備のほか、玄関ホールのオートロックや防犯カメラなど、共有部分の設備の費用も建物の工事費に大きく影響します。

建物を建てる場合には、設計費用もかかります。設計施工会社に建築を発注する場合、設計費用は施工費用に対するパーセンテージで決まります。しかし、設計と施工を別会社に発注する場合にはそれぞれの会社に費用がかかるため、設計施工の会社に発注するよりも高額になるのが一般的です。 

付帯工事費

建物の工事費以外に、インフラの工事費や敷地の地盤改良費用、外構工事費などの付帯工事費がかかります。ただし、建築会社によっては、これらが建物の工事費に含まれている場合もあるため、見積もりの段階でどの費用が別に発生するのか、よく確認しましょう。

建築にともなう手続き費用

マンションやアパートを建築する場合、建築確認申請手数料や測量費用などの手続き上必要になる費用もあります。

なお、建築確認申請手数料は、建物の規模によって金額が異なります。建物を建て始める「建築確認」という手続きのほか、建築期間中の「中間検査」「完了検査」という手続きにおいて必要な費用です。

これらの手続きは業者や専門家に委託するのが一般的なため、委託手数料も必要になります。

物件を購入する場合の初期費用

物件を購入する場合には、以下2つの初期費用がかかります。

1.物件の購入費用
2.仲介手数料

物件を購入する場合は建築する時間がかからないため、早く収益化できることがメリットです。また、建物の現物を見てから購入できるため、実際の賃貸経営をイメージしやすいでしょう。

物件の購入費用

物件を購入する場合は規模が大きく、築年数が新しい都心にある物件ほど、物件価格は高くなるのが一般的です。新たに建築する場合と同様に、構造によっても物件価格は異なり、木造だと安く、鉄筋コンクリートだと高くなります。

例えば、築年数の古い木造アパートなら数百万円、新築・築浅ならアパートで数千万円、鉄筋コンクリート造のマンションなら数億円規模です。ただし、既存の物件を購入する際には土地代も含まれるため、古い木造であっても億単位の価格となることもあります。

築年数の古い物件の場合は、その地域のニーズに合っていなかったり、オーナー様が望んでいる設備がなかったりする場合も少なくありません。物件の傷みが早く、修繕費が大きくかかることもあるでしょう。

そのため、物件の購入費用そのものを安くできたとしても、購入したあとでリフォームやリノベーションに多くの費用が必要になるかもしれません。また、状態によっては賃貸できる年数も短くなり、長期の経営には向かない点も考慮が必要です。

仲介手数料

物件を購入する場合は、取引の際に不動産仲介業者に対して仲介手数料を支払う必要があります。

仲介手数料は、物件価格をもとに計算します。国土交通省が公示している「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」のなかで、仲介手数料の上限は「物件価格(税抜)の3%+6万円(※)+消費税」と定められています。この範囲内で不動産仲介業者が金額を決定することが可能です。※物件費用400万円超の場合

マンション・アパートの購入金額は高額なため、仲介手数料も決して小さな額ではありません。

その他に必要になる税金や保険の費用

建物を建築する場合にも、物件購入の場合にも、以下の費用が必要になります。

1.税金
2.保険料
3.融資に関する費用
4. 登記費用
5.入居者獲得に必要な費用

これらは、あくまでも賃貸経営を始めるにあたり必要になる費用です。実際の運用にかかるランニングコストは別途必要になることを把握しておきましょう。

税金

物件を建築・購入するにあたっては、さまざまな税金が発生します。

まず、建物を建築する場合は建物の建築費用、物件を購入する場合は建物部分の購入費用および仲介手数料に10%の消費税が課税されます。

また、取得した土地や建物を登記する際には、登録免許税がかかります。新築の場合は所有権保存登記、中古の場合は所有権移転登記を行ない、取得にあたり融資を利用する場合は抵当権設定登記が必要です。そして、登録免許税は固定資産税評価額に対して課税されます。

土地や建物を取得した場合には不動産取得税が課税され、取得後数ヵ月から1年半を目安に、都道府県から納税通知書が届きます。税率は土地・建物ともに固定資産税評価額の4%ですが、2024年(令和6年)3月31日までは、土地および住宅については3%に軽減される特例が適用されます。

なお、新築の場合は不動産取得税の軽減特例があり、要件を満たせば住宅課税評価額から1戸あたり1,200万円を控除できます。中古の場合は、自宅については特例がありますが、賃貸物件の場合は特例が適用されないため注意してください。

さらに、売買契約書や建築請負契約書、融資契約書などを作成する際は、印紙税が必要です。印紙税の額は、契約書の内容や金額に応じて定められています。例えば、1億円超え5億円以下の不動産売買契約書の場合は、10万円の印紙税が必要です。

保険料

賃貸経営では、災害や事故などの万が一に備えて保険に加入することも大切です。特に火災保険への加入は必須といえるでしょう。

火災保険は火災だけでなく落雷、ガス漏れなどによる爆発にも対応しており、保険商品の内容によっては、突風や竜巻、洪水などの災害も補償を受けられます(特約が必要な場合もあり)。

火災保険で多くの災害をカバーできますが、火災保険だけでは地震による被害は補償されないため、地震保険にも加入しましょう。地震保険は単独ではなく、火災保険に付帯する形で契約します。

もう一つ加入しておきたいのが、施設賠償責任特約です。この特約を付けることで、建物や排水設備の老朽化などで入居者や近隣の方、通行人に損害を与えてしまった場合に備えることができます。

融資に関する費用

建築や物件購入のために融資を受ける場合、事務手数料や保証料がかかる場合があります。事務手数料には借入れ先によって定額型と定率型があるほか、事務手数料・保証料の両方が必要な場合もあれば、事務手数料のみの場合もあるため、融資を受ける前に確認しておきましょう。

司法書士報酬

不動産の登記や抵当権の設定手続きは、専門家である司法書士への依頼が一般的です。司法書士報酬は依頼する司法書士によって異なりますが、5万円~15万円程度を想定しておくとよいでしょう。

なお、建物を新築した場合には、建物表題登記が必要です。こちらは、土地家屋調査士へ依頼する必要があります。

入居者獲得に必要な費用

入居者の募集を管理会社に依頼する場合は、仲介手数料がかかります。募集活動にかかる費用は仲介手数料に含まれるのが基本ですが、特にオーナー様が広告を希望される場合には広告費も必要です。

また、物件の魅力を高めるため、セキュリティや照明、ゴミ捨て場などの設備を整える費用が必要になるケースもあるでしょう。

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マンション経営・アパート経営には維持費用も必要

マンション・アパート経営を始めたあとは、維持費用がかかります。

まず、物件にかかる維持費用として、物件の管理を外部に委託する際の管理委託費や修繕費・リフォーム費、共用部の光熱費などが必要です。火災保険や地震保険などの保険料も定期的にかかります。

その他、毎年課税される固定資産税や都市計画税、手残りがある場合には所得税や住民税、融資を利用している場合は返済費用も必要です。

アパート経営の維持費用について、詳しくは以下の記事で紹介しています。

マンション経営・アパート経営のランニングコストはいくら?相場や内訳を解説

必要な初期費用はどのように準備するのか

初期費用は融資を受けることで準備できますが、どこから借りるかによって借入れできる金額の上限や適用される金利に違いがあり、審査の内容や基準も異なります。

まず、公的金融機関からの融資が候補に挙がるでしょう。銀行、信用金庫、農協などの金融機関から借入れることも可能で、建築会社と金融機関が提携した融資商品もあります。

また、どこで融資を受けるかという点に加えて、融資を受ける金額、固定金利・変動金利の選択、返済期間などを合わせて検討する必要があります。

なお、上記で紹介した仲介手数料や登記にかかわる費用・保険料などは、一般的に融資の対象にはならないため注意が必要です。

マンション経営・アパート経営で初期費用をうまく抑えるコツとは?

前述したように、融資を受けてマンション・アパート経営の初期費用に充てることはできますが、できるだけ初期費用を抑えられるとよいでしょう。

マンション・アパート経営で費用を抑えるコツは以下の3点です。

1.建物の取得費用を抑える
2.融資に関する費用を抑える
3.仲介手数料を抑える

1.建物の取得費用を抑える

初期費用のなかでも、高額になるのは建物の取得費用です。

建物を建築する場合には、周辺ニーズを把握したうえで、シンプルな設計にしたり建材や建具のランクを予算に応じて調整したりするとよいでしょう。複数の建築会社のプランを比較する場合は、実績が豊富で信頼できる建築会社を選ぶことが大切です。

物件を購入する場合は、周辺の同条件の物件と比較して、適切な価格帯であるかを確認しましょう。国土交通省が運営する土地総合情報システムの「不動産取引価格情報検索」などを参考にして、割高な物件を購入しないようにしてください。

ただし、建物の取得費用を抑えることばかりを優先すると、建物の構造的な問題が出てきたり、必要な設備がおろそかになったりするなど、入居者の基本的なニーズを満たせなくなる可能性もあります。

そうなると、空室が増えて経営が成り立ちません。建物の設計・構造における優先順位や譲れないポイントを明確にし、建物の取得費用を十分に試算したうえで、どのくらいの費用をかけるべきか判断することが大切です。

2.融資に関する費用を抑える

融資を受ける場合には、金利や借入期間などできるだけ有利な金融機関を選択することも、初期費用を抑えることにつながります。借入れ先を選ぶ際は、複数の金融機関を比較検討することが重要です。

また、融資の際にかかる保証料は、支払い方法によって実際の費用負担が変わることも確認しておきましょう。金利に保証料を上乗せするタイプは初期費用を抑えるのには有効ですが、一括で支払うよりも返済総額は大きくなります。保証料設定のない融資商品を選ぶことも、選択肢に入れておきましょう。

3.仲介手数料を抑える

入居者募集における仲介手数料を抑えるには、オーナー様負担の広告費を抑える方法があります。しかし、広告が少ないと内覧希望者が現れにくくなるというデメリットもあるため、安易に実行するのはリスクがあります。

入居者との賃貸借契約で礼金を設定し、その礼金を広告費に充てる方法を取れば、オーナー様の実質的な負担を軽減できるでしょう。

マンション経営・アパート経営のリスクと対策

土地活用をお考えのオーナー様には、初期費用が大きな賃貸経営はリスクが高いと考えられがちですが、そうとは限りません。賃貸経営は経営手法が確立しており、リスク対策が可能なミドルリスク・ミドルリターン投資といわれています。

賃貸経営のおもなリスクは、賃料が入らないことと建物が毀損されることです。具体的には、空室の発生や老朽化、災害被害などが挙げられます。また、入居者とのトラブルなども避けたいリスクです。

これらのリスクは、適切な管理や修繕、保険への加入、客付けに強く親身になって対応してくれる管理会社を選択するなど、適切な対策を行なうことで回避できます。

マンション・アパート経営のリスクについては、以下で詳しく解説しています。
マンション経営の仕組みとは?メリットとリスクも解説!
アパート経営(賃貸経営)のメリットとリスクとは?

まとめ

マンション・アパート経営にかかる初期費用は、どのような建物で賃貸経営を始めるか、新規建築か物件購入かによって大きく異なります。オーナー様所有の土地に建物を建築する場合は、建築会社から複数プランの提示を受けたうえで十分に比較検討を行ないましょう。

また、賃貸経営を成功させるには、初期費用を抑える方法などをしっかりとアドバイスしてくれる建築会社や不動産販売会社を選ぶことがポイントです。