老後の財産管理や相続で活用できる「家族信託」

土地や建物に関するコンサルティングカンパニーSEIWAから土地オーナーの皆様の今後をサポートする情報を毎月お届けする「生和ジャーナル」vol98

SPECIAL FEATURE
「老老相続」時代の相続税対策!

老後の財産管理や相続で活用できる「家族信託」

遺言・成年後見制度・生前贈与とメリット・デメリットを比較

高齢化社会の相続対策に有効な家族信託

税制改正大綱が指摘する「老老相続」の問題

2021年度税制改正大綱は、コロナ禍が継続中であることに配慮し、経済対策のための減税を重視した内容となりました。賃貸経営に直接関係する大きな改正はありませんでしたが、相続・贈与関係では、住宅取得資金贈与の非課税限度額引き上げなどの改正がありました。

税制改正大綱では、社会の高齢化が進み、相続の時期が高齢化する「老老相続」について以下のように指摘しています。

「高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに、相続による資産の世代間移転の時期がより高齢期にシフトしており、結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。

高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば、その有効活用を通じた、経済の活性化が期待される。このため、資産の再分配機能の確保に留意しつつ、資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築することが重要な課題となっている。」

こうした点を踏まえ、今後は相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税するように検討を進めるという一文も盛り込まれています。

急増している相続税の課税対象者

国税庁の発表によると、令和元年分における被相続人数(死亡者数)は年々増加傾向にあります(図1参照)。

特に2015年開始の相続税制改正で基礎控除の引き下げなどが行われ、相続税の課税対象者の裾野が広がったため、2015年から課税対象者や課税割合が急増し、現在に至っています(図1、図2参照)。

高齢化で高まる認知症のリスク

「人生100年時代」と言われるほど、日本人の平均寿命は延びています。これに伴い、認知症患者の増加という問題もクローズアップされてきました。厚生労働省によると、わが国の認知症高齢者の数は、2025年には約700万人となり、65 歳以上の高齢者の約5人に1人に達すると見込まれています。

国民病とも言える認知症は、相続時にも大きな問題となっています。遺言書の作成ができなかったり、相続した妻が認知症で遺産を活用できなかったりというケースがあるからです。また、相続税の納税資金用に不動産を処分するつもりだったのに、認知症のためにできなくなってしまうということもあり得ます。

成年後見制度に比べ融通がきく家族信託

元気なうちに行える相続対策としては、遺言や生前贈与があります。また、認知症などで判断力が低下した場合の備えとして、成年後見制度や家族信託制度があります(図3参照)。

成年後見制度の場合、家族が自宅不動産の売却などを行うには家庭裁判所の許可が必要ですが、よほどの理由がないと財産の活用は許可されません。一方、信頼する家族(受託者)に財産の管理・運用を託す家族信託は、より融通がききます。

家族信託には「財産分離機能」があり、自分の財産を分けて信託する・しないを選べます。財産ごとに別々の受託者を指定することもできます。また、受託した財産に贈与税がかからないというメリットがあるほか、受託者への報酬は後見人(弁護士や司法書士など)より安くなります。なお受託者への報酬は、受益権とは別に指定することができます。

相続や事業承継などのニーズに応える家族信託制度

家族信託の活用には専門家の知識が必要

家族信託の実際の活用にあたっては、様々な手法やファクターを考慮する必要があります。例えば、預貯金は信託せずに残しておき、口座を年金の受取口座とすることで日常生活の費用をまかない、その部分に関してのみ後見人に任せるといったことも可能です。

このように、家族信託は専門的な知識を駆使することでより良い形で活用できます。当社では、司法書士などの専門家と連携してお手伝いさせていただくことが可能ですので、将来の財産管理について心配な方はお気軽にご相談ください。

家族信託の活用例

事例 1
共有不動産をトラブルなく相続

兄弟で共同保有している不動産を共有分割したり、売却したりすることなく、自分の子供に相続させることができます。

賃貸マンションを信託財産、兄弟3人(Aさん、Bさん、Cさん)を委託者および受益者、Aさんの長男を受託者とする。
マンションの管理を長男が行い、家賃収入はAさん兄弟に分配される。BさんとCさんは、管理のお礼として受益権をAさんの長男に相続させる旨、遺言書に残す。兄弟全員が死亡した時点で信託は終了し、Aさんの長男は不動産の処遇を自由に決められる。

事例 2
2次相続以降の承継先を指定

遺言では2次相続以降を決めることはできませんが、信託では以下のようなことが可能です。

自宅を信託財産とし、Aさんが委託者・受益者、受託者を次男とする。死後は受益権を長男に相続させ、第2受益者を次男に指定。長男の死後、自宅は長男の妻ではなく次男のものとなる。

事例 3
元気なうちは経営に参加

会社経営を続けながら、認知症などで経営に支障をきたす場合に備えることができます。

信託財産を不動産・預貯金・自社株とし、委託者をAさん、受託者を長男、受益者をAさんとする。自社株が移った長男は議決権を行使できる。一方、委託者であるAさんが議決権の行使についての指図権を持つように信託契約で設定すれば、Aさんも経営に関わることができる。Aさんが認知症になっても、受託者である長男は不動産の処分や金融機関との取引ができるので、会社運営に支障はない。

税金関連 オススメの記事

ONE POINT!

坂本 拓也

司法書士法人・行政書士法人・
土地家屋調査士法人 
UNIBESTグループ代表
行政書士 坂本 拓也

家族と資産を守るための家族信託

超高齢社会において、認知症などによる判断能力の低下の問題が増加しています。判断能力がなくなると銀行において預金の払戻、振込などができないのみならず、場合によっては預金口座そのものが凍結されてしまうこともあります。そうなると、成年後見制度を利用しない限り凍結を解くことはできなくなります。
しかし、成年後見制度においては資産の柔軟な活用は不可能で、例えば、自宅の建替えをする、所有アパートの大規模修繕のために2000万円の金銭を振り込むなどの行為は原則としてできません。
そこで成年後見状況になるまえの予防的手段として「家族信託」という資産管理方法が注目されています。アパート・マンションオーナーの方もしくはそのご親族から、所有不動産が判断能力低下により“塩漬け”になってしまう前に「家族信託」の相談を受けることが急増しています。ご親族の早めのサポートにより、家族の大切な資産を守りませんか?

家族信託の実際が学べる本

『お客様の未来をサポートする<br />
 家族信託Q&A』

『『お客様の未来をサポートする
家族信託Q&A』』
鯖󠄀田豊則著

家族信託の知識・ポイントをQ&A形式でやさしくまとめています。金融機関がどう関わるかという観点から解説し、信託の専門家から見た気づかれにくい留意点や豆知識なども掲載。(1870 円)

▸問合せ 経済法令研究会
https://www.khk.co.jp/

『必ずできる! <br />
 相続・遺言・家族信託の手続ガイド』

『『必ずできる!
相続・遺言・家族信託の手続ガイド』』
千田大輔著

相続遺言の現場を1000件以上見てきた経験をもとに、相続・遺言のひと通りがわかるように解説。家族信託については、誰もが家族信託の利用ができるように実務上の処理方法を解説。(1870円)

▸問合せ セルバ出版
https://seluba.co.jp/

世界の有名な建築物をご紹介します!

ウェストミンスター宮殿(イギリス)

ウェストミンスター宮殿(イギリス)

テムズ河畔にそびえ立つウェストミンスター宮殿。併設されている時計塔(ビッグ・ベン)とともにロンドンを代表する建築物として知られています。かつて王宮だった建物は1834年に大半が焼失。現在の建物は20年の歳月をかけて1860年に完成したもので、全長は約265m、1100以上もの部屋があります。再建にあたっては設計案を公募。イギリス建築界の第一人者チャールズ・バリーの案が採用され、モダン建築が主流だった19世紀にゴシック様式の復活が試みられました。豪華な内装は、やはりゴシック様式の復活を唱えた建築家オーガスタス・ピュージンが手掛けました。

生和コーポレーション編集部

「すべてはオーナー様のために」をテーマに、土地をお持ちの方の目線で、不動産の有効活用に関連する情報を発信しています。当社の豊富な実績をもとに、税理士や建築士、宅地建物取引士などの有資格者が監修した記事も多数掲載。賃貸マンションの建設・管理から相続や税金の話まで、幅広いコンテンツを公開中。

編集部へのご意見・情報提供などございましたらお問い合わせからお願いします

会社名
生和コーポレーション株式会社
所在地

西日本本社
大阪府大阪市福島区福島5丁目8番1号

東日本本社
東京都千代田区神田淡路町1丁目3番

会社設立
1971年(昭和46年)4月16日
お問い合わせ・ご連絡先
0120-800-312

他の生和ジャーナル記事を見る

  • vol89 2020年度の税制改正や相続法改正の影響は?
  • vol85 相続税に関わる「小規模宅地の特例」に見直しが!
  • vol84 路線価の上昇が続く今、オリンピック後の土地活用を考える

【無料小冊子プレゼント】お客様の声が詰まった「建築事例集」プレゼント 建築までの資金繰りは?どんなサポートが必要?経営は順調?手がけてきた建築事例をお客様の声を交えてご紹介する一冊。あなたのオーナー生活に是非ご活用ください。

5分でわかる生和コーポレーション。土地活用一筋50年の生和の強みを5分でお伝えします。