土地活用で介護施設を経営するメリット・デメリットは?流れや費用も解説!

超高齢化社会に向かうと予想される日本では、社会貢献もできて安定収入も見込める土地活用方法として、介護施設の経営に注目が集まっています。

特に、広大な土地をお持ちのオーナー様は、土地の広さを活かして介護施設の経営を考えてみてはどうでしょうか?

この記事では、介護施設経営のメリット・デメリットを取り上げつつ、経営開始までの流れや費用などのポイントを解説します。

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土地活用で介護施設を経営する場合のメリット・デメリット

土地活用の方法には、アパート・マンション経営やテナント経営など、あらゆる選択肢があります。それらのなかから介護施設を選択することで、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

メリット

まずは、土地活用で介護施設を経営するメリットについて、収益性・節税の2つの観点から解説します。

比較的収益が安定している

介護施設の経営では、通常「一棟貸し」という方法をとります。一棟貸しとは、オーナー様が建てた介護施設を、介護事業者に1棟全部をまとめて貸す方法のことです。

賃貸マンションやアパート経営では、空室が発生すると、その分の賃料が減少する「空室リスク」が問題になります。

しかし、介護施設は一棟貸しすることで、介護事業者から入る賃料は、固定額になるのが一般的です。したがって、施設内の空室状況や、施設利用者の増減に関係なく、オーナー様は安定した収益を得ることが可能です。

日本の高齢化はさらに進んでいくと予想されています。介護施設や高齢者向け住宅などの需要は今後ますます増加し、市場規模も拡大していくと見込まれるため、土地活用としての介護施設経営は、将来性のある事業だといえるでしょう。

相続税の大幅な節税につながる

介護施設の経営は、土地と建物を介護事業者に一括して貸し出すと、相続税の負担を大幅に軽減することにつながります。

その理由は、土地に賃貸物件を建てることで「貸家建付地」と呼ばれる特例が適用になり、相続税を算出する基本になる土地・建物の評価額が下がるためです。現金で資産を残す場合と比較すると、評価額を半分近くまで下げることができるでしょう。

例えば、保有資産3億円の場合、相続税評価額がどのようになるかを説明します。3億円を現金のみで保有する場合と、土地と建物に1億5,000万円ずつ使用した場合、さらに貸家建付地として介護施設経営を行なった場合の相続税評価額はそれぞれ下表のとおりです。

なお、貸家建付地の評価に使用する借地権割合(※1)は70%、借家権割合(※2)は30%で試算し、一棟貸しにより空室は発生しないと考え、賃貸割合(※3)を常に100%としています。

※1 その土地の権利のうち借主の権利の割合(土地により異なる)
※2 その建物の権利のうち借主の権利の割合(全国一律30%)
※3 建物の部屋の合計床面積のうち貸し出している部屋の床面積の割合

区分 土地 建物 相続税評価額
現金3億円保有 土地活用はせず、そのまま現金3億円を保有 3億円
土地・建物に1億5,000万円ずつ使用(自用地・自用家屋) <1億5,000万円の土地> →土地の相続税評価額の算出に使われる路線価の目安は公示地価の80%程度 →相続税評価額は1億5,000万円×80% =1億2,000万円 <1億5,000万円の建物> →建物の相続税評価額は固定資産税評価額による →固定資産税評価額は新築の場合、建設費の50%~60%程度 →相続税評価額は1億5,000万円×50%=7,500万円 1億9,500万円 ※現金3億円と比較すると、相続税評価額は65%に減額
介護施設経営(貸家建付地の適用) <1億5,000万円の土地> 貸家建付地の相続税評価額 =自用地としての評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合) →1億2,000万円×(1-70%×30%×100%) =1億2,000万円×0.79 =9,480万円 <1億5,000万円の建物> 貸家建付地の上にある建物の相続税評価額 =固定資産税評価額-(1-借家権割合×賃貸割合) →7,500万円×(1-30%×100%) =7,500万円×0.7 =5,250万円 1億4,730万円 ※現金3億円と比較すると相続税評価額は約49%に減額

介護施設を経営すると、現金で資産を保有する場合と比較して、相続税評価額を約半分に下げられることがわかります。

デメリット

次に、土地活用で介護施設を経営するデメリットを、設置の規制・初期費用の2つの観点から解説します。

希望した介護施設が設置できない場合がある

介護施設には、特別養護老人ホームや訪問介護を行なう事業所など、さまざまな種類がありますが、建築基準法などにより地域ごとに建設可能な施設が異なります。

また、介護付きの施設の場合は、都道府県から「特定施設入居者生活介護」の指定を受ける必要があります。このタイプの施設は、総量規制によって自治体ごとに数が決められており、地域での予定総数を越えてしまう場合は、施設の開設を希望していても許可されません。

ご自身の所有する土地で、どのタイプの介護施設が建設できるかを自己判断するのは難しいため、自治体に確認するようにしましょう。

高額な初期費用がかかる

介護施設の建設では、土地200~300坪以上、建物の延べ床面積400~600坪以上の規模が目安になります。そのため、施設の建設費などの初期費用が高額になるのは避けられません。

ただし、高額な初期費用がかかる点は、リースバック方式を使うことで解決できる可能性があります。リースバック方式とは、契約予定の介護事業者から「建築協力金」を提供してもらい、施設完成後に、賃料から建設協力金の返済分を差し引く方式です。

また、介護施設が「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」の場合は、補助金制度が利用できるほか、固定資産税などの軽減措置もあります。このような制度は経費の軽減に役立ちますが、細かい適用条件もあるためしっかりと調べて活用しましょう。

その他のデメリットとしては、介護事業者が撤退してしまうと次の事業者を見つけるのが困難な点や、介護施設という建物の特性上、転用が難しい点が挙げられます。

「土地を他の用途で使いたい、または売却したい」という事情が出てきた場合でも、地域に密着した介護施設は解約・閉業が難しいことから、介護施設経営では長期的に取り組む必要があることを把握しておきましょう。

介護施設を建てるのに向いている土地とは?

土地活用として介護施設の経営を行なう場合、どのような土地が向いているのでしょうか。

基本的には土地の広さが重要です。400坪以上の広大な土地をお持ちの場合は、介護施設に向いているといえます。

とはいえ、それ以下の土地では不可能というわけではありません。介護施設にはグループホームなどの小規模な施設もあるため、100坪程度の土地でも経営できる場合があります。

立地としては、賃貸マンションやアパート経営などには不向きといわれる郊外でも、介護施設なら経営可能です。

例えば、認知症の方が対象で、利用者が1人では外出しないグループホームや、介護度の高い方の入居が予想される「介護付有料老人ホーム」では、多少交通の便が悪い地域でも設置できます。

土地が駅から遠い場合は近くにバス停があれば、利用者やそのご家族などの利便性がより高まるでしょう。郊外に広い農地や露天の駐車場などをお持ちの場合は、転業も問題ありません。

ただし、自立している方が多く入居するサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)では、利用者の行動範囲も広くなるため、基本的に賃貸アパートや賃貸マンションのような交通の利便性が求められます。

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介護施設の経営を始めるまでの流れ

ここからは、介護施設の経営を考え始めてから実現するまでの具体的な流れを、順に確認していきましょう。

「土地活用の専門業者への相談」「土地診断」「需要調査」「土地活用のプランを立てる」「介護事業者の決定→予約契約」「建築計画→契約・施工」「検査・引き渡し→介護施設運営開始」という流れでお伝えします。

土地活用の専門業者への相談

所有している土地で、介護施設による土地活用が可能かどうかは、なかなかご自身では判断が難しいものです。また、介護施設の経営が可能な土地・立地であっても、どのような種類の介護施設が向いているかは、素人判断では決められないでしょう。

計画を進めるにあたっては、建築基準法や特定施設の総量規制など、さまざまな条件をクリアしなければなりません。一棟貸しになる場合は、介護事業者の選定から契約、綿密な打ち合わせまで、納得のいくように進める必要があります。

土地活用で介護施設の経営を考える場合は、所有地のある地域に詳しい土地活用の専門業者に相談するところから始めましょう。

土地診断

土地活用の専門業者に相談すると、所有している土地の広さや道路・給排水の状況など、土地の現況や周辺環境を詳細に調査してくれます。

介護施設は、施設の種類によって建設可能な地域が定められています。法規チェックなどを行ない、その土地が介護施設に適しているかどうか、どのような施設が向いているかなどを専門業者に総合的に判断してもらいましょう。

需要調査

土地診断と併せて、土地周辺の介護施設の需要状況や設置状況なども、専門業者に調査してもらいましょう。対象地区の役場に問い合わせを行ない、介護付有料老人ホームの総量規制の状況などもチェックします。

相談した土地活用の専門業者が介護事業者とのパイプを持っている場合は、出店の意向があるかどうかヒアリングを行ないます。

土地活用のプランを立てる

土地診断・需要調査でわかった土地の状況や、役所での確認、事業者の意向などを踏まえて、介護施設を建設する土地活用のプランを専門業者に作成してもらいます。

具体的な建設費がわかってくるので、公的融資や民間融資を活用した長期的な収支計画を立てるとともに、経営計画も提案してもらいましょう。委託する介護事業者の賃料などの計画も入っていれば、介護施設での土地活用プランが具体的になってきます。

また、補助金が利用できるかを確認します。経営開始後に関係してくる所得税や相続税を軽減するための対策なども、この段階でしっかりとチェックしておきましょう。

介護事業者の決定→予約契約

土地活用プランで納得できるものが出てきたら、契約する介護事業者を決定します。

契約する介護事業者は、経営の安定した大手であれば安心です。ただし、地域での人脈や同業他社とのつながりから信頼度が高く、実績を持っている事業者も存在します。契約先は土地オーナー様の意向だけで選択できるとは限りませんが、安心して任せられる事業者を選ぶようにしましょう。

介護施設の経営は一棟貸しになるため、着工前に賃貸借の予約契約を行なっておくのが一般的です。これは、建設途中で介護事業者が撤退しないようにするためです。もし建設中に事業者が解約したら、重大なペナルティが課せられます。

介護事業者と予約契約を締結してから、土地活用の専門業者との請負工事契約に進みましょう。

建築計画→契約・施工

建築基準法の規定やオーナー様の意向、介護事業者からのヒアリングの内容などを踏まえ、具体的な介護施設の設備や間取り、配置などを検討します。

建築計画が決定したら、土地活用の専門業者と請負工事契約を締結し、いよいよ施工開始です。

検査・引き渡し→介護施設運営開始

建物完成後に検査が完了したら引き渡しが行なわれ、その後は介護事業者によって運営が開始されます。

土地活用で介護施設の経営を行なう場合、相談から実現まではこのような流れで進みます。

介護施設ごとの費用と賃料収入はどれくらい?

次に、介護施設の種類別の特徴を確認しながら、建築にかかる費用と賃料収入をシミュレーションしてみましょう。有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、グループホームの例を取り上げたあと、資金調達の方法としてリースバック方式をご紹介します。

なお、実際の賃料収入は、委託する介護事業者との協議で決定します。ここでは、期待利回り(投資額に対して期待される1年あたりの収益の割合)を建設にかかった初期費用の10%として賃料設定し、試算しました。

有料老人ホーム

有料老人ホームの特徴と建設費用、賃料の例は次のようになっています。

【特徴】
有料老人ホームは民間企業が運営している施設で、食事、家事、健康管理、介護のいずれかのサービスがついている高齢者向けの居住施設です。支援の内容によって「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」に分類されます。

利用者は、自分のライフスタイルや受けたい支援に合わせて、多種多様な価格帯やサービス提供方法のなかから利用する施設を選びます。

なお、介護付有料老人ホームと住宅型有料老人ホームは、自立可能な方から要介護5までの方が入居可能ですが、健康型有料老人ホームのみ要支援2までの方が対象です。

【建設費用と賃料の例】

区分 規模 費用
土地 600坪 評価額3億円
建物 600坪 建設費5億円
賃料の計算
(3億円+5億円)×10%=8,000万円/年 8,000万円÷12ヵ月=約666万円/月 ※賃料は土地の評価額+建物の建設費の10%を年間収入と想定し、12ヵ月で割ったものを1ヵ月あたりの収入=賃料として算出

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の特徴と建設費用、賃料の例は次のようになっています。

【特徴】
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、2011年改正の「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」により創設され、急激に施設数が伸びている介護施設です。

入居できるのは60歳以上の方か、60歳未満で要支援~要介護認定を受けている方で、基本的には介護の必要性が低く、比較的元気で自立している高齢者の方が対象となっています。本格的な介護施設というよりは、高齢者対象の賃貸住宅といった位置付けです。

建物はバリアフリー対応で、提供されるのは見守りや安否確認のサービス、日常での困りごとなどの生活相談サービスです。

【建設費用と賃料の例】

区分 規模 費用
土地 500坪 評価額1億5,000万円
建物 400坪 建設費3億円
賃料の計算
(1億5,000万円+3億円)×10%=4,500万円/年 4,500万円÷12ヵ月=約375万円/月 ※賃料は土地の評価額+建物の建設費の10%を年間収入と想定し、12ヵ月で割ったものを1ヵ月あたりの収入=賃料として算出

サ高住の設置には規模や設備面で細かい基準が設けられており、条件を満たさないと自治体に登録できません。

例えば、次のような条件が定められています。

・館内がバリアフリー構造であること
・各戸の床面積が原則として25平方メートル以上であること
・各戸に水洗便所、浴室、洗面設備、台所、収納設備を備えていること
・安否確認サービスと生活相談サービスを提供すること
・居住の安定に配慮された契約内容になっていること

このような条件を満たしているサ高住の場合、国土交通省が行なう「高齢者等居住安定化推進事業」の対象となり、建設費の10%を上限として補助金が利用できます。

なお、過剰に華美な設備などがある場合は、補助金の対象外になります。詳細は国土交通省のホームページでご確認ください。

グループホーム

グループホームの特徴と建設費用、賃料の例は次のようになっています。

【特徴】
グループホームは認知症の高齢者(65歳以上)に特化した小規模の介護施設で、施設のある市区町村に住民票がある人が対象です。ユニット式と呼ばれる生活方式をとっており、最大9人までが1ユニットとなります。

大規模な施設とは異なり、ユニット内で家事などを分担しながら少人数で共同生活を送るため、環境の変化に弱い認知症の方でも安心して生活できるのが特徴です。

施設スタッフもユニット担当制で、入居者それぞれに応じたケアを提供します。認知症の方が住み慣れた地域で暮らし続けられる、地域密着型の介護施設です。

【建設費用と賃料の例】

区分 規模 費用
土地 230坪 評価額9,000万円
建物 200坪 建設費1億8,000万円
賃料の計算
(9,000万円+1億8,000万円)×10%=2,700万円/年 2,700万円÷12ヵ月=225万円/月 ※賃料は土地の評価額+建物の建設費の10%を年間収入と想定し、12ヵ月で割ったものを1ヵ月あたりの収入=賃料として算出

リースバック方式

土地活用で介護施設を建設する際、資金調達の方法の一つに「リースバック方式」があります。

【特徴】
リースバック方式とは、介護事業者から提供された「建設協力金」を使って、土地のオーナー様が介護施設を建設し、介護事業者に貸し出す方式です。完成した介護施設は、土地のオーナー様の所有物となります。

リースバック方式は、初期費用を抑えながら介護施設の経営に参入でき、単なる借地よりも、収益性の高い建物賃料を得られるのがメリットです。

また、リースバック方式では、土地・建物ともオーナー様の名義で貸し出す形になりますので、相続税対策としての有効性も維持できます。

リースバックの契約期間は一般的に15年~20年程度で、建設協力金は事業者の賃料から差し引くかたちで返済します。

例えば、1つ目の例に挙げた有料老人ホーム建設で介護事業者が建設費を建設協力金として提供し、事業開始後に土地のオーナー様が毎月300万円を返金する契約の場合、建設費用と賃料は以下のようになります。

【建設費用と賃料の例】

区分 規模 費用
土地 600坪 評価額3億円
建物 600坪 建設費5億円 建設協力金の提供を受ける
賃料の計算
(3億円+5億円)×10%=8,000万円/年 8,000万円÷12ヵ月=約666万円/月 リースバック方式で賃料から毎月300万円返金する契約の場合、 約666万円-300万円=約366万円/月 ※賃料は土地の評価額+建物の建設費の10%を年間収入と想定し、12ヵ月で割ったものを1ヵ月あたりの収入=賃料として算出

まとめ

介護施設の経営は、超高齢化社会に向かう日本において、今後も需要が見込まれる事業であり、相続税対策にも役立つ土地活用方法です。

一方で、施設建設の際には法律上の規定が設けられていたり、高額な初期費用が必要になったりすることから、オーナー様個人の力で土地活用を行なうには困難な場面もあります。そのため、介護施設の経営を検討する際は、土地活用の専門業者に相談するとスムーズに進められるでしょう。

生和コーポレーションは、土地活用一筋51年の豊富な実績とノウハウを持つ専門企業です。オーナー様の土地に適した介護施設を判断するための土地診断や市場調査から、介護事業者の選定までしっかりとサポートします。

また、生和コーポレーションでは、介護施設以外にもアパートやマンション経営など、幅広い土地活用のご相談を承っています。事業計画のご提案やプランニングは無料で行なっていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。